2263ダウン症児の学びとコミュニケーション支援ガイド
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8A ダウン症児の特徴と育ちを理解するし罹患することがあります.また,滲出性中耳炎になるケースもよくみられます.これは中耳に滲出液がたまるもので,発熱もないため気づかれずに過ごすことも多いようです.中耳を取り囲む蜂巣様の骨が発達して中耳の容積が拡大していくことによって滲出液はたまりにくくなるため,治癒には時間がかかります.場合によっては,鼓膜にチューブを挿入して持続的に排液するような手術も必要になります.したがって,耳鼻咽喉科を定期的に受診することが必要です.7 眼科的疾患 90%に屈折異常がみられ,60%に眼鏡が必要になります.強度近視や乱視も多く,弱視になる可能性もあり,その場合は1歳未満であっても眼鏡を考慮することがあります.斜視(とくに内斜視),眼振も多いようです.したがって,新生児期のチェック(先天性白内障など,早期の手術が必要な場合もある)の後は,1歳時に検診を受けます.そこで異常がなければ3歳時,5歳時に検診を受けることになりますが,もし何らかの異常があれば,その検診の間隔は短くなります.白内障も高校生になるころには30%程度に出現するようですが,手術をするようなケースはまれのようです.8 歯科疾患,摂食・嚥下機能の特徴 摂食・嚥下の特徴は,狭い口腔容積と筋緊張低下,舌が大きく突出していること,口唇を閉じない,咀嚼獲得が遅れる,丸飲み,口呼吸などです.頭部が後ろに反ると過開口になり誤嚥の原因となるため,頭部をしっかり支える工夫をします.離乳食の上手な食べさせ方は,スプーンのボール部を1/3〜1/2口に入れて,下唇に乗せたままにし,上唇が閉じてくるまで待ち,唇を閉じたときすばやくスプーンを口から抜き取るようにします.子どもが口を開けているときに親がスプーンを口の奥まで入れて食べさせることはしないように気をつけます.食べる機能を発達させるためには,まず自分で唇を閉じることを覚えなければいけません. 歯そのものの形態異常もみられますが,歯列が不整のため矯正をする場合もあります.9 神経/精神関連 てんかんの発症リスクがあり(約5~10%),とくに乳児期~2歳ごろまでに点頭てんかんとして出現することが多いようです.点頭てんかんはピクンと一瞬上肢と頸部を屈曲(強直)させるもので,数秒間あけて何回か繰り返します(シリーズ形成).治療は,抗てんかん薬やACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の注射が行われます.症状出現から治療開始までの期間が短いほど,発作抑制に関して予後がよいことがわかっています.また,年齢が上がるにつれててんかん(全身強直間代けいれん)の出現率が上昇し,成人期には約20%ほどになります. 知的障害の程度にも関係しますが,幼児期より自閉的傾向,あるいは自閉症の合併と考えたほうがよい場合があります.記憶はよいものの,対人性が弱く,こだわりもあってコミュニケーションのとりづらいダウン症児にも,自閉症児への対応をとることで少しずつやりとりができるようになり,コミュニケーションがとりやすくなる場合があります. また,21番染色体上にAPP遺伝子が3コピー存在し,APPが過剰産生されやすく,その代謝からアミロイドの蓄積や老人斑が形成され,アルツハイマー病の発病に至りやすいと考えられています(図2).40歳ごろを過ぎると歩行や言語能力の退行がみられるようになりますが,それより早く20

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