2264症例から考える針筋電図
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59診断症例4:GiantMUP4Ⅱ基本症例編spinal and bulbar muscular atrophy(SBMA)球脊髄性筋萎縮症球脊髄性筋萎縮症(Kennedy-Alter-Sung病)とは1968年WilliamKennedyがMiltonAlter,JooHoSungとNeurology誌に初めて報告したX染色体連鎖性の進行性疾患で,脊髄および脳幹の下位運動ニューロンの選択的変性・脱落によって近位筋優位の筋萎縮・筋力低下をきたす疾患である(国内では川原汎が1897年にすでに報告していた)1).アンドロゲン受容体(androgenreceptor:AR)遺伝子の第1エクソン内のCAGリピートの異常伸長が原因で,変異ARが核内に凝集するため緩徐に運動ニューロンが減少していき,神経原性筋萎縮をきたす.青年期に手指の振戦や筋けいれんで発症するが受診は中年以降が多く,高CK血症精査,嚥下障害精査で見つかることが多い.経過は約30年で動揺性歩行,起立困難となるものの,ALSと比較して進行は緩徐であり,呼吸器感染などで亡くなることが多い2).診察所見では近位筋優位の筋萎縮および手指の振戦があり,顔面筋のcontractionfasciculationが目立つことが特徴である.構音障害は目立たないにもかかわらず舌萎縮があり,挺舌させて舌表面がcontractionfasciculationによりうごめき,深い凹凸を形成することを確認して診断がつくことが多い.本症例では振戦はあったが,舌の萎縮は開口しただけでは明らかではなく,挺舌して初めて特徴的な舌萎縮が確認できた.男性の同胞がいないと家族歴も参考にならないため,一見して診断がつかないこともまれではない.AR遺伝子のCAGリピート回数が多いほど早期に発症するため同一年齢でみると重症であるが,疾患の進行速度はリピート数に依存せず一定の傾向がある.血液検査では血清CKが神経疾患としては比較的高値で,発症初期より血清クレアチニンが低いことが見いだされており本症例でも基準値よりも低値であった3).疾患解説◦緩徐進行性の運動神経障害で肉眼的にfasciculationを確認できればSBMAを疑う.筋力低下が高度ではないがよく代償された巨大MUPはSBMA,SMA(spinalmuscularatrophy:脊髄性筋萎縮症),PPMA(post-poliomuscularatrophy:ポリオ後筋萎縮症)などでみられることがある.◦SBMAでは感覚神経障害の合併が有名であるが,すべての例でSNAPが低下するわけではない.◦再支配電位は針先の位置によって見え方が変化する.

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