2268脳血管内治療の進歩2017
6/14

70夢と現実1 血管内治療の“breakthrough”には新しいデバイスの登場が密接に関係している.離脱式プラチナコイルであるGDC(Guglielmi de-tachable coil)の登場が,脳動脈瘤治療に与えた影響は計り知れない.Dr. Guido Guglielmiはローマ生まれのイタリア人で,UCLAでGDCの実用化に成功した後,ローマに戻り人生を謳歌していたという.日本人として残念なことは,日本での血管内治療の発展は欧米で開発されたデバイスを使用することによりもたらされたともいえることである. GDCは2012年2月1日をもってわが国でも保険償還されて広く使われるようになった.導入当初の価格は1本15万円であり,米国での価格(コイルの長さ等で違う)より3倍近く高価な場合もあった.脳神経外科の諸先輩方から「欧米の物をありがたがって使っているだけなのか?」との厳しい意見をいただくことも多く,世界中で使われるような日本発のデバイスを開発したいと強く思うようになっていた.一方,地方都市の民間病院の医師がそのような夢を持っても大企業には相手にされないという現実も理解していた.試作品完成2 2006年に転機が訪れた.世界に誇れるシリコーン素材・加工技術を持つ富士システムズ株式会社の工場が福島県にあるのを知り,この最高精度の日本製シリコーン素材を生かしてガイディングカテーテルを開発できないかと考えた.2007年にバルーンガイディングカテーテルの試作品が完成したが,富士システムズはガイドカテーテル製造の経験がなく,大きな苦労があった(表1).CELLOTMの有用性を世界に問う3 CELLOTMの完成度は低く,大幅な改良を要したが,同時に世界中のマーケットに乗せ日本での取り組み2Essential Point◉ 真に必要とされるデバイスならば,世界中で使用される.◉ 2009年に製造販売承認取得,2011年4月にCE marking取得,2012年8月にはFDA-510kを取得することができた.◉ 地方都市の民間病院で生まれた純国産カテーテル「CELLOTM Balloon Guide Catheter, Co-vidien/Medtronic」は現在では世界中で使用されている.II 特別企画「臨床医のニーズを製品に」広南病院血管内脳神経外科1),東北大学大学院医学系研究科神経外科学分野2) 松本康史1),冨永悌二2)

元のページ 

page 6

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です