2268脳血管内治療の進歩2017
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120疫 学1 わが国における横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻(Transverse-sigmoid sinus dural arterio-venous fistula:TSS dAVF)は,dAVFの28.0~33.4%を占め,その頻度は海綿静脈洞部dAVFに次ぐ1,2).症 状2 TSS dAVFの症状は,局所症状と静脈圧亢進症状に大別される.局所症状は拍動性耳鳴で,乳様突起部で他覚的血管雑音を聴取することもある.静脈圧亢進症状は,静脈還流うっ滞による静脈性浮腫や出血として現れ,その部位に対応する神経学的脱落症状や痙攣をきたす.広範な静脈還流うっ滞から頭蓋内圧亢進に至り,視力障害や認知機能障害を呈する例もある3).脳血管造影の読影3 dAVFのDSA所見は,feeding artery,shunting pointおよびdraining vein[sinus],に分けて読影する.1Feeding artery Feeding arteryの同定は早期動脈相で行う. TSS dAVFのfeeding arteryとなる代表的動脈は,後頭動脈(occipital artery:OA)のmas-toid branch(図1a・b),中硬膜動脈(middle meningeal artery:MMA)のpetrosquamosal branch(図2a・b),上行咽頭動脈(ascending pharyngeal artery:APA)のneuromeningeal trunk(jugular branchとhypoglossal branch)(図北里大学医学部脳神経外科1),広南病院血管内脳神経外科2) 近藤竜史1),松本康史2)横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻3Essential Point◉ 現時点で最も根治的な治療法は経静脈的塞栓術である.◉ Onyxの保険収載後は,経動脈的塞栓術が根治的治療の一翼を担うと予想される.◉ 有効かつ安全な治療のためには,治療前の詳細なDSA読影に基づいた治療立案が必須である.III 硬膜動静脈瘻 update 2016B.部位別の治療戦略と血管内治療―TSS dAVF 読影に際しては解剖学的知識を基に“見えないdangerous anastomosis”も評価する.発生過程に由来する動脈同士の吻合は,DSAで描出されなくとも必ず存在するからである.Check Point

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