2269骨粗鬆症治療薬クリニカルクエスチョン100
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30 ChapterⅠ 骨粗鬆症のリスク因子とその評価骨粗鬆症におけるQOLの位置づけと評価について教えてください.20原発性骨粗鬆症患者のQOL評価を目的とする質問表として日本骨代謝学会作成のJOQOLがあります.和式トイレに関する質問項目など,わが国独自の生活習慣を反映した項目が含まれています.骨粗鬆症の治療の目的としてQOLの維持向上があることから,診療と治療ではQOL評価とそれにもとづいた治療と予防をおこなうことが望ましいです.QOL評価の意義 健康関連QOL(Health Related QOL:HRQOL)は疾患がおよぼす影響の評価,治療,ケアによる改善(悪化)の1つの指標としてもちいられる.QOLはアウトカムを評価するうえで重要である.高齢者社会のわが国では慢性疾患が増加し,その治療と予防にあたり,急性期疾患とは異なる対応が必要である.患者中心の医療への志向,健康に関する考え方の変化から,骨粗鬆症診療においても患者立脚型医療評価の指標であるQOL評価が求められる.JOQOL(Japanese Osteoporosis Quality of Life Questionnaire) 骨粗鬆症患者QOL評価質問表1,2)で,患者自身が回答を記入する自記式で,1999年に作成・発表されたものである.2000年度版(一部改訂)では現状表,評価表,基本表,および6領域(I.痛み5問,II.日常生活動作:身の回りのこと4問,家事5問,移動7問,III.娯楽・社会的活動5問,IV.総合的健康度3問,V.姿勢・体形4問,VI.転倒・心理的要素5問,家族支援1問,VII.総括1問)からなる.満点は152点(100点満点に換算して評価可能)である.領域別の重み付けはなく,総和(総得点)で評価する.骨粗鬆症患者におけるQOL(JOQOL)に影響を与える関連因子 年齢,骨折の有無,骨折数,脊柱の後彎変形(後彎),痛みが影響する.薬物治療によるQOL改善 Nevittらによると,2,027例の閉経後骨粗鬆症,椎体骨折症例はアレンドロネートによる腰痛改善,臥床期間の短縮,ADL改善,QOL改善がみられた3).また,エルカトニン注射剤による疼痛軽減,JOQOLでの改善がみられた. 25(OH)D,年齢,既存椎体骨折数,併発床,転倒がJOQOL総点数と関連しており,Ohtaら骨粗鬆症至適療法(Adequate Treatment of Osteoporosis:A-TOP)研究JOINT-02によると,アレンドロネートと活性型ビタミンD3薬の併用によりJOQOL「娯楽・社会的活動」改善がみられた4).文献 1) 骨粗鬆症患者QOL評価検討委員会:骨粗鬆症患者QOL評価質問表(2000年度版).日本骨代謝学会雑誌2001;18. 2) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版.ライフサイエンス出版 2015:166. 3) Nevitt MC, et al.:Effect of alendronate on limited-activity days and bed-disability days caused by back pain in postmenopausal women with existing vertebral fractures. Fracture Intervention Trial Research Group. Arch Intern Med 2000;160:77-85. 4) Ohta H, et al.:Quality of life in Japanese women with postmenopausal osteoporosis treated with raloxifene and vitamin D:post hoc analysis of a postmarketing study. Curr Med Res Opin 2015;31:85-94.(遠藤直人)

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