2269骨粗鬆症治療薬クリニカルクエスチョン100
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76 ChapterⅡ 骨粗鬆症の薬物療法とエビデンス薬物治療開始後の経過における注意点と治療の評価について教えてください.43骨量,骨代謝マーカー,椎体変形,骨折リスク,QOLを中心した定期的なモニタリング,フォローアップにもとづき,本人の治療意欲,ライフスタイル,服薬アドヒアランスなども考慮した治療法を選択します.治療評価の方法 骨粗鬆症治療経過の観察時には,骨量測定,骨代謝マーカー,脊椎X線などによる定期的評価に加えてQOLや骨折リスクに関する評価をおこなうことが有用である.治療後の骨量増加は治療開始後一定の期間を経て初めて判定されるのに対して,治療後比較的早期に認められる骨代謝マーカーの改善に関しては,その後の骨量増加の予測因子となる点もあわせ,治療効果の早期判定に有用とされている.また,骨代謝効果の強い薬物をもちいて治療をおこなっている患者に対しては,治療開始前に同時測定した骨吸収マーカー,骨形成マーカーについて,治療開始から6ヵ月以内(治療開始後約3~6ヵ月)に2回目の測定を実施する.実地診療に際しては,骨型アルカリホスファターゼ(bone alkaline phosphatase:BAP),I型プロコラーゲン-N-プロペプチド(type I procollagen-N-propeptide:P1NP),酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ5b(tartrate-resistant acid phosphatase 5b:TRACP-5b)をはじめとする比較的日内変動が小さい骨代謝マーカーが使いやすく,腎機能の影響も受けにくいため腎機能低下のある場合や高齢者でももちいやすい1).骨粗鬆症治療の経過観察に際しては,骨折の有無や疼痛などの自覚症状,運動機能の評価,身長低下などの身体所見,さらに副作用出現の確認や観察が重要である.肝機能,腎機能などの生化学検査についても薬剤効果や副作用発現の評価にもちいる.実地診療においてDXA(dual-energy X-ray absorptiometry)法が利用できない場合には,脊椎X線と骨代謝マーカーとを組み合わせて治療効果の判定を実施することもある.治療効果の評価 骨粗鬆症治療開始後における骨量測定のタイミングに関しては,最小有意変化を参考にして決めることが原則であるが,保険診療上は4ヵ月ごとに1度おこなうことが可能となっており,実地診療のなかで定期的に実施して治療効果の評価をおこなう.骨代謝マーカーの測定については,保険診療の観点からも骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択時に1回,その後の6ヵ月以内の薬剤効果判定時または薬剤治療方針を変更後6ヵ月以内に1回測定して治療効果の評価にもちいる.骨吸収抑制薬をもちいる場合,治療開始後約3ヵ月で骨吸収マーカー低下が認められ,骨形成マーカー低下については骨吸収抑制にともなうカップリングによってさらに3ヵ月ほど遅れる形で認められるとされる.したがって治療開始3~6ヵ月後に骨吸収マーカーの再測定を実施し,6ヵ月から1年程度の間隔で骨形成マーカーを再測定することが望ましい.なかでも,テリパラチド(連日投与)をもちいる場合には治療開始1~3ヵ月後のP1NP上昇が有効と報告されている2).また,治療効果および副作用発現の有無を評価するため,3~6ヵ月に1度程度の血液検査や尿検査による評価や確認が推奨される.治療継続の判断 骨粗鬆症治療薬については,単剤投与にて開発が進められてきた流れや保険診療上も単剤

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