2271ミトコンドリア病診療マニュアル2017
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6 ミトコンドリアはすべての細胞に存在する.このため各組織・臓器が障害される可能性があり,その結果,多彩な症状を呈する1~6).障害を受ける代表的な臓器の症状を表1に示す.一般に説明のつかない複数の臓器にわたって症状を呈する場合には,ミトコンドリア病が示唆される.その一方で,肝症状や心筋症など単一の臓器障害を呈することもある. しばしば多病巣性の臨床徴候を示し,間欠性または再発寛解型の経過を呈することが多い.しかし病型,病因遺伝子だけでなく,個々の症例による差も大きく,一概にいうことはできない.年齢による特徴を以下に記載する.新生児~乳児期早期 ①脳筋症状,②消化器・肝症状,③心筋症状は新生児期の3大症状ともいわれている2,4). 先天性高乳酸血症として発症することも多い.脳筋症状として,繰り返す無呼吸,不活発,けいれん,筋緊張低下などがある.消化器・肝症状として,嘔吐,哺乳不良,下痢(慢性化しやすい),肝腫大,膵外分泌障害(特にPearson症候群)などがある.乳幼児期 この時期は特に多彩であり,多くの症候群が報告されている1~3,5,6).① 体重増加不良(慢性の水様性下痢や絨毛萎縮を伴う場合もある).② 哺乳不良,発達障害などを伴う進行性の肝障害〔肝型ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MTDPS)〕(CQ7~17参照).③ 筋緊張低下,哺乳不良,弱啼泣,頸定遅延,小脳失調,錐体路徴候,精神運動障害,発達障害,筋力低下,呼吸不全などを伴う急性進行性の脳筋症(近位尿細管障害や肥大型心筋症を伴うこともある).④ 他の先天代謝異常症が否定的な,反復する急性ミオグロビン尿,筋緊張低下,脳卒中発作(繰り返す頭痛,嘔吐など),筋強直,各種血中酵素(CKやトランスアミナーゼなど)の上昇.⑤ 発達遅滞,アミノ酸尿症,胆汁うっ滞,鉄過剰症(ヘモジデローシス)を伴う高乳酸血症(GRACILE症候群)をはじめとして,様々な症状を呈する症候群が報告されている.小児期・成人期 中枢神経症状・筋症状を呈することが多い1,2).① 筋肉痛や運動不耐を伴う筋力低下,失調症,小脳萎縮,筋力低下,けいれん,知的障害,精神症状(うつなど).② 進行性の肝障害を伴う神経変性(Alpers症候群)③ MELAS(CQ30~37参照),MERRF(CQ38~45参照),CPEO/KSS(CQ46~54参照),ミトコンドリア神経胃腸管性脳症症候群(MNGIE)などもこの時期にあたる.第1章 総 論ミトコンドリア病の臨床症状2

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