2276ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017
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2.CQ1の推奨と解説(推奨①) 抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)の寛解導入治療は,海外の主要な診療ガイドライン(CPG)ではグルココルチコイド(GC)とシクロホスファミド(CY)の併用が推奨され,わが国のCPGにおいてもGCとCYの併用治療が主たる治療として位置づけられている.欧米においては古くからGC+CYが標準とされていることから,欧米ではGC単独療法の有用性を検討する必要性はないと考えられる.一方わが国では,2011年のCPG発刊の2年前にスタートしたコホート研究によれば,AAVの約半数はGC単独療法で行われ,免疫抑制薬の併用が少ない1).すなわちエビデンス・診療ギャップが存在し,実臨床ではGC+CYが行われていないケースが多い可能性がある.このため,GC単独療法とGC+CYの報告を検討し,GC+CYが患者予後の改善に有効か否かを検討した.加えてCYの投与方法について,汎用される静注シクロホスファミドパルス(IVCY)と経口シクロホスファミド(POCY)の優位性を検討した. GC単独療法とGC+CYの比較では,システマティックレビュー(SR)の結果,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)‒ANCA陽性壊死性半月体形成性糸球体腎炎を対象とした1件(20名)のランダム化比較試験(RCT)とANCA陽性顕微鏡的多発血管炎(MPA)および腎限局型血管炎(RLV)を対象とした1件(64名)の後ろ向きコホート研究がみつかった.いずれも「重大」なアウトカムである死亡,末期腎不全,寛解には優劣は認められなかった. GC+POCYとGC+IVCYの比較では,SRにより3件のRCT(199名)およびこのうち1件の長期成績がみつかった.GC+IVCYはGC+POCYに比して,「重大」なアウトカムである1,2年死亡,重篤合併症発現,重篤感染症合併が優れていた.しかし,「重要」なアウトカムである再燃でGC+POCYよりも劣っていた. なお,安全性に関連して,GC+POCYとGC+IVCYの比較で採用となった論文の参加症例は,平均年齢50歳代(組み入れ基準は18~80歳),腎障害は平均血清クレアチニン2~3 mg/dL(組み入れ基準1.36~5.7 mg/dL)である(詳細は推奨作成関連資料① 1—17 CQ1—2 2. 1 背景2. 2 解説(エビデンスの要約)16 Part1 診療ガイドラインCQ 1ANCA関連血管炎の寛解導入治療では,どのようなレジメンが有用か?推奨推奨の強さエビデンスの確実性①ANCA関連血管炎の寛解導入治療では,グルココルチコイド単独よりも,グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスまたは経口シクロホスファミドを提案する.弱い非常に低ANCA関連血管炎の寛解導入治療では,グルココルチコイド+経口シクロホスファミドよりも,グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスを提案する.弱い非常に低静注シクロホスファミドパルスの代替として経口シクロホスファミドを用いてもよい.CQ 1—1ANCA関連血管炎の寛解導入治療では,グルココルチコイドとグルココルチコイド+経口シクロホスファミド(または静注シクロホスファミドパルス)のどちらが有用か?CQ 1—2ANCA関連血管炎の寛解導入治療では,グルココルチコイド+経口シクロホスファミドとグルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスのどちらが有用か?1)本推奨文でのANCA関連血管炎は,顕微鏡的多発血管炎,多発血管炎性肉芽腫症を意味する.2)RPGNを含む重症な腎障害例は腎臓専門医に相談することが望ましい.3)各薬剤を安全に使用するために,添付文書,Part 2 VIII「治療」(p112)参照.

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