2281腹部超音波診断ファーストステップ
4/8

50● 呼吸困難とは呼吸をするために努力が必要な状態で,労作時呼吸困難と比較して安静時呼吸困難では緊急を要する疾患が多い.●呼吸困難の程度が強く救命処置が必要な場合は気道確保,酸素投与などを優先させ,状態が落ち着いてから検査を行う.●呼吸困難は呼吸器疾患や循環器疾患においてしばしば認められる症状であるが,耳鼻咽喉科疾患や精神疾患などでもみられることがある.●呼吸困難をきたす呼吸器系の代表的な疾患としては,慢性閉塞性肺疾患(COPD),肺線維症(間質性肺炎),気管支喘息,気胸,急性肺血栓塞栓症などがある. ●呼吸困難をきたす循環器系の代表的な疾患としては,うっ血性心不全,心タンポナーデなどがある.●呼吸困難をきたす耳鼻咽喉科の代表的な疾患としては,喉頭浮腫などがある.●呼吸困難をきたす精神疾患の代表的な疾患としては,過換気症候群などがある.● 全身倦怠感とは肉体的,精神的に「だるい」と感じる自覚症状を指し,疲労感や易疲労感などとほぼ同義語として用いられている.全身倦怠感をきたす原因のなかでは精神的な疲労が最も多く,次いで生理的疲労が多い.また種々の器質的疾患による疲労は全体の30~40%を占めるとされる.●全身倦怠感をきたす疾患には,生理的疲労,精神疾患(神経症,心身症,うつ病,統合失調症),感染症(一般細菌,抗酸菌症,ウイルス,真菌,寄生虫), 消化器疾患[急性肝炎(図26),慢性肝炎,肝硬変(図27)],心疾患(うっ血性心不全),呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患,肺線維症),腎疾患[急性腎不全(図28),慢性腎不全],血液疾患(貧血,白血病,悪性リンパ腫),神経筋疾患(多発性硬化症,重症筋無力症),代謝・内分泌疾患(糖尿病,甲状腺機能低下症,副甲状腺機能亢進症,下垂体機能低下症,アジソン病,クッシング症候群),薬物性(アルコール,麻薬,有機溶剤・重金属中毒),慢性疲労症候群,線維筋痛症候群(線維筋痛症)などがある.呼吸困難3全身倦怠感4 不明熱とは不明熱(FUO:fever of unknown origin)は古典的には有熱期間が3週間以上にわたること,その間に38.3℃以上の発熱が数回以上みられること,さらに1週間以上の入院精査を行っても発熱の原因が特定できない場合と定義されている.その後,医学の進歩により,現在では有熱期間が3週間以上にわたること,その間に38℃以上の発熱が数回以上みられることに関しては同様だが, 3日間の入院精査または少なくとも3回以上の外来受診でも診断が不明な場合を不明熱と定義することが一般的になっている.不明熱の三大原因は感染症,悪性腫瘍,膠原病であり,感染症の頻度が最も多い.Break time

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る