2281腹部超音波診断ファーストステップ
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51C痛み・症候から何を疑うのかC ◯2 症候から考える● 黄疸は血清ビリルビンが上昇し,眼球結膜,皮膚や粘膜などが黄染した状態である.血清総ビリルビンの正常値は1mg/dL以下で,2~3mg/dL以上になると肉眼的に眼球結膜や皮膚の黄染がみられるようになる.●黄疸は障害される部位により,①肝前性黄疸,②肝性黄疸,③肝後性黄疸に分類され,また増加するビリルビンの種類により,①非抱合型(間接)ビリルビン性黄疸,②抱合型(直接)ビリルビン性黄疸に分類される.肝前性黄疸では間接ビリルビンが上昇する.肝性黄疸には間接ビリルビンが上昇する疾患と直接ビリルビンが上昇する疾患がある.肝後性黄疸では直接ビリルビンが上昇する.●間接ビリルビンの上昇する疾患には,肝前性黄疸(溶血性貧血,シャント高ビリルビン血症など),肝性黄疸[体質性黄疸:ジルベール(Gilbert)症候群・クリグラー・ナジャー(Crigler-Najjar)症候群]などがあるが,いずれの疾患も超音波検査上,有意な所見はみられない.●直接ビリルビンの上昇する疾患には,肝性黄疸[肝細胞障害,肝内胆汁うっ滞,体質性黄疸:デュビン-ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群・ローター(Rotor)症候群],肝後性黄疸(閉塞性黄疸)がある.肝細胞障害性としては,急性肝炎,肝硬変,アルコール性肝疾患,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変),肝内胆汁うっ滞性としては,急性肝炎,薬剤性肝障害,良性反復性,妊娠性反復性,原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変),原発性硬化性胆管炎などがある.肝後性黄疸としては,結石や腫瘍(胆道癌,膵頭部癌,十二指腸乳頭部癌)による閉塞性黄疸(図29)がある.●肝性黄疸と肝後性黄疸の鑑別には超音波検査が有用である.肝性黄疸のなかで超音波検査が有用な疾患として,急性肝炎,劇症肝炎,肝硬変などがある.肝後性黄疸では超音波検査で肝内ないし肝外胆管の拡張が認められるため,診断に有用である.また肝後性黄疸の原因となる総胆管結石,胆管癌,膵頭部癌などの鑑別にも腹部超音波検査は有用である.黄 疸5図26  急性肝炎 (p.56参照)図27 肝硬変 (p.58参照)図28  急性腎不全 (p.116参照)

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