2282慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016
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1.1.臨床的特徴 慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)は,持続的な伝染性単核症様症状(発熱・リンパ節腫脹・肝脾腫)を典型的な特徴とし,末梢血や病変部の組織にEBVが検出される疾患である.重篤な合併症として,消化性潰瘍,冠動脈瘤,間質性肺炎,間質性腎炎,血管炎,神経障害(中枢・末梢),ぶどう膜炎などの報告がある.一部の患者では種痘様水疱症や蚊刺過敏症という皮膚症状を合併する.なお,本ガイドラインでは,全身症状を伴う種痘様水疱症および蚊刺過敏症は,CAEBVとして扱っている.CAEBVにおいては,EBVはT細胞やNK細胞に感染し,この感染細胞がクローナリティをもって増殖し,免疫による排除から逃れ,臓器に浸潤して,多彩な臨床症状を惹起すると考えられる.そのため,CAEBVは単なる感染症ではなく,リンパ増殖性疾患と位置づけられている1). EBウイルス感染症研究会は,2003年に診断指針を公表した2).この指針の概略は,(1)臨床所見・経過,(2)EBV感染のウイルス学的な診断,(3)除外診断から構成されている.ウイルス学的な診断について,EBVは健常既感染者ではB細胞に潜伏感染するため,病的な持続的感染を証明することが診断に重要である.CAEBVでは,EBVの抗体価が異常高値を示すことがあり,特に,T細胞にEBVが感染している患者に多い.しかしながら,EBV抗体価が高値ではない例も少なからず存在するため,抗体価のみでEBVの病的な持続感染を証明することは困難である.組織診断にはin situ hybridization(ISH)によるEBV‒encoded small RNA(EBER)の検出が有用であるが,組織採取に侵襲性を伴う.一方,末梢血におけるEBV DNA量を測定するのは比較的容易であり,リアルタイムPCR法が代表的な測定法である.本ガイドラインでは,CAEBVの診断や病態の評価に用いるEBVの検出法等についての情報を集積し,エビデンスに基づき推奨している.さらに,研究の進展により,EBVが持続感染するリンパ球の種類が病態や予後に影響する因子であることが明らかとなり,CAEBVの診断に必須と考えられるようになった3).これらの点をふまえて,本ガイドラインでは,診断指針の改訂案を作成し,T細胞もしくはNK細胞にEBVの感染を認めることを診断基準に加えた(表1). CAEBVは,経過中にEBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV‒HLH),T細胞・NK細胞リンパ腫・白血病などの発症を見る.重篤な病態への進展は,予後を悪化させるが,病期分類が存在しないために明確な治療ガイダンスが困難な状況であり,今後も情報の集積を継続することが重要である.1.2.疫学的特徴 CAEBVの発症は日本・韓国・中国北部などの東アジアの小児と若年成人に偏在する.日本国内での偏在はないと考えられる.特定の遺伝的素因が想定されるが解明されていない.全国調査からわが国における新規発症数は年間100例と推定される.診断例における発症時期が明確でない症例1慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)8第2章疾患の基本的特徴

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