2283女性内分泌クリニカルクエスチョン90
2/10

2 Chapter 1 思春期思春期発来のメカニズムは?1GnRH分泌は,乳幼児期に活発で,その後は不活発となる.その分泌がパルス状に再活発化すると下垂体からのゴナドトロピン分泌が増え,卵胞が発育し,卵胞からのエストロゲン分泌が始まって思春期を迎える.思春期発来のメカニズムとはこのGnRH分泌の再活発化が起こる機序,と考えられる.思春期発来の生理 思春期とは第2次性徴の出現に始まり,初経を経て第2次性徴が完了し,月経周期がほぼ順調になるまでの期間をいう.わが国では8~9歳ころから17~18歳ころまでとされる.第2次性徴だけを狭義に捉えると,8~9歳ころから発現し始め3~4年以内に完了する.この時期を終えることにより生殖能力を獲得する. 乳房発育(thelarche)は卵巣からのエストロゲン分泌の増加(gonadarche)を意味する.通常9~11歳で発育を開始し,女子ではそのころからすでに身長増加のスパートが開始している.恥毛の発育(pubarche)は卵巣由来のエストロゲンと,卵巣・副腎由来のアンドロゲンとの相乗作用による.副腎性アンドロゲンの産生(adrenarche)は6~8歳ころから増加し,恥毛はこれより数年遅れて発育を始める.性腺ステロイドの産生増加により成長ホルモンの夜間分泌が増加し,IGF-Iなどの種々の介在因子を経て骨格が成長する.乳房発育,恥毛発育,発育スパートに続き,日本人では平均12~13歳で初経(menarche)を迎える. 出生時には両側卵巣におよそ200万個の原始卵胞をもっており,その卵胞が何らかの機構により少しずつリクルートされ,一次卵胞まで発育する.この過程は出生直後にはすでに始まり,ゴナドトロピンに依存せず継続的に起こり,かつ同時に複数個の卵胞が発育する.ゴナドトロピン分泌が不十分なうちは一次卵胞までしか発育せず,エストロゲン産生をみないうちに卵胞は閉鎖する.何らかの理由でゴナドトロピン分泌が増量すると,卵胞は閉鎖を免れて発育を続けエストロゲンを産生する.すなわち,卵胞はいつでも準備されており,刺激があれば発育しうるのであり,卵胞発育が一時的でなくある程度連続して起こればエストロゲン分泌も続く.その結果,第2次性徴が始まり思春期が開始したとみなされる.思春期発来の機序 ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)分泌は,乳幼児期に活発で,その後は不活発となる.その分泌がパルス状に再活発化すると下垂体からのゴナドトロピン分泌が増え,上記のエストロゲン分泌が始まって思春期を迎える.したがって,思春期発来のメカニズムとはこのGnRH分泌の再活発化が起こる機序,と考えられる. 近年,ゴナドトロピン単独欠損症家系の検討から,GnRHニューロンに存在するG蛋白共役型受容体GPR54(現在はkisspeptin receptor:KISS1Rとよばれる)が見出され,その内因性リガンドはkisspeptin(KISS1)とよばれている.このkisspeptinは,kisspeptinニューロンにおいてKiSS-1遺伝子の産物から酵素による切断を経て産生される.思春期に視床下部神経

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る