2284知的障害・発達障害のある子どもへのコミュニケーション支援
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1 ワーキングメモリへの配慮111)ワーキングメモリの容量を推測する ワーキングメモリには,記憶できる容量がある.先ほどよちよち歩きの子どもの話を紹介した.呼ばれていたことを覚えられる子のワーキングメモリの容量は一つである. 例えば,「今からお絵かきをします,用意してください」と言われて,画用紙とクレヨンを用意できれば,ワーキングメモリの容量は二つの可能性がある. あるいは,「画用紙を持ってきて,椅子に座ってください」と二つの事柄を覚えて実行できれば,容量は二つと思われる.ちなみに,頭の中に二つのことを留め置けるようになるのは4歳頃とされる. 「帽子をかぶって,上履きを持って,体育館に行きなさい」では,3つの容量が必要となる.この指示が理解でき,実行できるのは7歳頃とされる.ただ,繰り返しやっていることは,長期記憶となり頭の中に保存されている.「言われたら,体が自然に動く」ということもある.こういう場合は,必ずしもワーキングメモリを使っているとはいえない.子どものことばの理解力を踏まえながら,初めての経験を指示してみて,実行の結果で容量を推測したい.2)ワーキングメモリの容量と年齢 ワーキングメモリの容量は,一般的には年齢とともに増えていく.子どもと関わっていて,「大人になったな」と感じることがある.この成長した感じは,ワーキングメモリの容量が増えたからではないかと思う.大人のように,あれこれ考える力にはワーキングメモリの働きが影響するからである. ワーキングメモリの容量だが,そのピークは十代半ばから三十代半ばくらいらしい.自分の容量と子どものそれは違うと認識し,大人はことばかけの際に配慮する必要がある.ワーキングメモリと容量

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