2287骨関節画像診断入門 第4版
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者を混乱させるだけであり,とくに「スリガラス状」という言葉には賛同できない。線維性骨異形成症は純粋な溶骨性の病変であることがほとんどだが,基質が石灰化するとスリガラス状に見えることがある。石灰化がさらに強くなると,硬化性病変のように見えることもある。他の溶骨性病変でもスリガラス状のX線像を示すことがしばしばあるので,スリガラス状という表現は混乱を招くだけであろう。脛骨に存在する病変に対して線維性骨異形成症を鑑別に挙げるなら,アダマンチノーマ(adaman-tinoma)も同時に挙げるべきだろう(図2-7)。アダマンチノーマは画像的にも組織学的にも,線維性骨異形成症に似た悪性腫瘍である。理由は不明だが,これは脛骨にのみ発生する稀な疾患である。だから,読者の記憶にとどめておく必要はないかもしれない。たとえ読者が多忙な放射線科医であっても,この疾患で誤診することは一生のうちほとんどないだろう。多骨性の線維性骨異形成症は,時に皮膚のカフェオレ斑(café-au-laitspots)と思春期早発症を伴うことがある。これらはMcCune-Albright症候群と呼ばれている。この症候群では,多骨性骨病変がしばしば一側性すなわち体の片側に起こる。しかし,実際にはこのような症例はめったになく,他の疾患との鑑別点にはならない。顎の多骨性病変はケルビム症(cherubism)†と呼ばれ,これに侵された小児は特徴的な容貌を呈する。頬がぷっくり膨れて,いわゆる“天使”のような外観(“angelic”look)であるが,成人になると自然に消退する。線維性骨異形成症はしばしば軟骨基質を含むことがあるが,これを生検すると,軟骨基質が軟骨肉腫に似ることがある(他の軟骨組織と同様に)。本来,骨単純写真のみで診断すべきものを,誤って生検を実施した結果,不幸にも根治手術が行われた症例を著者は経験している。鑑別点:骨膜反応がない。鑑別点:骨膜反応がない。ENCHONDROMAANDEOSINOPHILICGRANULOMA内軟骨腫と好酸球性肉芽腫Enchondroma内軟骨腫指骨に発生する良性嚢胞性病変のうち,最もよくみられるのが内軟骨腫である(図2-8)。内軟骨腫は軟骨から形成されるいずれの骨にも発生し,中心性のこともあれば偏心性のこともあり,また膨132.良性溶骨性病変図2-7アダマンチノーマ.線維性骨異形成症に似た硬化性・溶骨性変化が混在した病変が脛骨に見られるが,これはアダマンチノーマに特徴的な所見である.この疾患はほぼすべて脛骨にしか発生しない.本症は,ときに悪性転化することがある.脛骨に線維性骨異形成症に似た病変を見たときは,常にアダマンチノーマも考えなければならない.†訳注(ケルビム症):家族性下顎線維性骨異形成症(famil-ialfibrousdysplasiaofthejaws)とも呼ばれる.

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