2299よくわかるNew保育・教育実習テキスト 改訂第3版
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21 保育者・教師への学習の核となる実習―理論と実践を結びつける― 実習は学内での学習とは異なり,保育・教育の現場に赴き,子どもとの触れ合いを通じて保育者・教師の職務を体験的に学習することである.学生に視点をあてていうならば,実習は目や耳,体と心を総動員して能動的に学ぶ体験型の学習である.実習に対する緊張や戸惑いと共に,子どもの発想の豊かさや育ちに対する発見・驚き・感動,あるいは実習生の援助・指導に対する手応え等,多様な学習体験が,実感を伴って実習生の中に深く刻み込まれる.実習での体験・学びが,学生のその後の学習や進路に深く影響を与えることもしばしばである. 特に保育・教育は,子どもとかかわり,子どもを育む実践的な営みであるという点から,実習の意義は重要である.学内における講義・演習等の学習内容が抽象的な理論・知識にとどまっているならば,保育者・教師としての力量形成につながらず,「頭でっかち」で「動けない」保育者・教師になってしまう危険性があるからである.実習を経験する中で,「授業で学んだ子どもの発達の姿が具体的にイメージできるようになった」「実習で悩んだ子ども同士のトラブルへの対応を学びたい」等,実習は学内における理論や知識,技能の学習と実践を結びつけていくのである. 同時に,実習は「限られた期間における一つの現場での体験である」という限定があることを認識する必要がある.保育・教育の場としての共通性を有しながらも,個々の実習先は,歴史や地域性によって,保育・教育理念,運営のあり方,保育・教育の方法等において多様である.年齢やクラス,子どもによる違い,担当の保育者・教師による違いもある.また実践は,その時々の子ども達と保育者・教師によって生み出された営みであり,常に一つの対応・方法が「絶対に正しい」という訳ではない.保育・教育は,子ども達にとってどうなのか,と模索を続ける営みである.したがって,実習生にも研究的な姿勢が求められ,実習後の学びが重要なものとなる.実習反省会等の事後指導,あるいは学内における授業を通じて,自分の学んだことを保育・教育の多様性・普遍性の中に位置づけ,深めていくことが大切なのである.このように実習は,理論と実践を結びつけ,学生の中に保育者・教育者として生きて働く力を培っていくものなのである.2 保育・教育実習と実習指導 実習とは,講義等で学んだ技術や方法等を,実地または実物にあたって学ぶことであり,①学内の施設の中で行う実習②社会における実際の職業の中において行う現場実習の二つがある.保育・教育実習は後者であり,学生A 実習という学び方

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