2303シェーグレン症候群診療ガイドライン2017
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232.臨床分類 SSは他の膠原病を合併しない一次性SSと,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)や全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)などの膠原病を合併する二次性SSに大別される.さらに一次性SSは,病変が涙腺,唾液腺などの外分泌腺に限局し,ドライアイやドライマウスなどの腺症状(乾燥症状)のみを呈する腺型(glandular form)と,病変が外分泌腺以外の全身諸臓器におよび,多彩な臓器病変や検査異常を呈する腺外型(extra‒glandular form)に分類される.なお,乾燥症状はないが,口腔検査,眼科検査,血液検査で陽性所見を呈する症例は潜在型(subclinical)SSと称され,乾燥症状がある顕在型(clinical)SSと区別される. 一次性SSの腺外症状は報告によって違いはあるが,頻度が高い腺外症状は関節痛/関節炎,レイノー現象,筋肉痛,リンパ節腫脹,発熱(微熱)であり,皮膚症状,肺病変,腎病変,白血球減少,神経障害,消化器病変などが続く1~3). また,菅井はSSの病変をlymphoagressive disorderと捉え,一次性SSを病期Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの3期に分類している4).病期Ⅰは乾燥症状のみを呈する腺型SS(約45%),病期Ⅱは全身性の何らかの臓器病変や検査値異常を示す腺外型SS(約50%),病期Ⅲは腺外性SSの中で悪性リンパ腫を発症するもの(約5%)である.基本的には病変は病期Ⅰから病期Ⅱに進展し,一部で病期Ⅲに進展すると考えられていたが,粘膜関連リンパ組織(mucosa‒associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫の概念の出現により病期Ⅰから病期Ⅲに直接進展する場合もあることが分かってきたとされている.(佐野 統)参考文献 1) Jonsson R, Bowman SJ, Gordon TP. Sjögren’s syndrome. In:Koopman WJ, Moreland LW, editors. Arthritis and Allied Conditions:A Textbook of Rheumatology. 15th ed. Lippincott Williams and Wilkins 2005, 1681‒1705 2) Ramos‒Casals M, Solans R, Rosas J, Camps MT, Gil A, Del Pino‒Montes J, Calvo‒Alen J, Jiménez‒Alonso J, Micó ML, Beltrán J, Belenguer R, Pallarés L. GEMESS Study Group. Primary Sjögren’s syndrome in Spain:clinical and immunologic expression in 1010 patients. Medicine(Baltimore)2008;87:210‒219 3) 川上 純.Sjögren症候群.日本リウマチ財団教育研修委員会,日本リウマチ学会生涯教育委員会編.リウマチ病学テキスト改訂第2版.診断と治療社2016,202‒210 4) 菅井 進.病型と診断基準.日本シェーグレン症候群学会編.シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル改訂第2版.診断と治療社2014,2‒213.診断基準・分類基準 SSの診断基準として,国内では厚生省改訂診断基準(JPN)(1999年)(表1)1),国際的な分類基準として臨床研究の適応症例の選択にアメリカ・ヨーロッパ改訂分類基準(AECG)(2002年)2)が汎用されてきたが,さらにSjögren’s International Collaborative Clinical Alliance(SICCA)がアメリカリウマチ学会分類基準(ACR)(2012年)3)を発表した. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「自己免疫疾患に関する調査研究」班(研究代表者:住田孝之)では,同研究班拡大SS分科会の参加10施設(金沢医科大学,長崎大学,兵庫医科大学,慶應義塾大学,東京女子医科大学,鶴見大学,九州大学,産業医科大学,京都大学,筑波大学)に通院中のSS患者およびSS疑いの患者のうち,JPN基準に挙げられた4項目(1.生検病理組織検査,2.口腔検査,3.眼科検査,4.血液検査(抗SS‒A/Ro抗体,抗SS‒B/La抗体))をすべて実施した症例694例(男性51例,女性643例)を対象に,3つの診断基準・分類基準の検証が行われた4).各施設での臨床診断,前述の各基準の満足度に関して,調査票を用いて後ろ向きに検討され,主治医による臨床診断をゴールドスタンダードとして,3つの基準の感度・特異度・正確度が算出された.各施設における主治医による臨床診断は,SS 476例(一次性SS 302例,二次性SS 174例),非SS 218例(他の膠原病合併なし197例,合併あり21例)であった.694例(SS 476例,非SS 218例)

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