2308小児消化器内視鏡ガイドライン2017
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解説文 小児の消化器内視鏡検査の鎮静に用いられる薬剤に関する論文は,対象患者が1~18歳のASA術前状態分類IまたはII(CQ25表1参照),内視鏡検査としてEGDまたはCSを行ったものが大多数であった.特定のプロトコールを直接比較した研究は少なく,ミダゾラムを含むレジメン,プロポフォールを含むレジメンなどを中心に多数の薬剤の組み合わせが報告されている. ミダゾラム静脈内投与に関する報告は,RCTが4論文(対象検査数302件),その他7論文(対象検査数2,809件)であった.ミダゾラム+メペリジン1~3),ミダゾラム+フェンタニル1,4),ミダゾラム+ケタミン3~5),ミダゾラム+プロポフォール2)の併用は検査の完遂率が91.6~100%と高く,軽度の呼吸抑制はあるものの重篤な副作用は少ないとされている.成人の内視鏡鎮静とは異なり,ミダゾラム単独投与の有効性を指示するデータは限られている6).ミダゾラムの小児への投与では激越,不随意運動,発作性興奮,暴行などの逆説反応が起こりやすいことが知られている. プロポフォールに関する報告は,RCTが5論文(対象検査数451件),前向き研究1論文(対象検査数134件),その他7論文(対象検査数10,121件)であった.プロポフォールを含むレジメンは,99.9%で検査に必要な適切な鎮静が得られ,有効性が高い.プロポフォール単独投与よりもミダゾラム7,8),フェンタニル8),ケタミン9,10)を併用したレジメンがプロポフォールの追加投与が少なく,喉頭けいれんなどの副作用も少ないと報告されている.また,プロポフォール+ミダゾラム併用とミダゾラム+メペリジン併用との比較では,プロポフォール+ミダゾラム投与群が鎮静効果発現時間,検査時間,覚醒までの時間が短く,また検査中の体動の抑制を必要とする症例が明らかに少なかった2). EGD前のミダゾラム経口前投薬7)あるいはケタミン経口前投薬4)は静脈路確保に伴う苦痛や両親からの分離不安を軽減させるとの報告がある.また,ケタミン+デクスメデトミジン併用11),プロポフォール+デクスメデトミジン併用に関する小規模な症例報告12)があり,今後のデクスメデトミジンを用いた鎮静の有効性と安全性の検討が期待される. ミダゾラムで鎮静された症例に対するフルマゼニルによるリバースの効果はプラセボと差が60ステートメント推奨の強さ(合意率)エビデンスレベル様々な鎮静薬や鎮痛薬を適宜組み合わせて用いることを提案する(表3,4参照).2(弱い推奨)(73.7%)Bこれらの薬剤の使用に際しては,鎮静に関するインフォームド・コンセントを取得し,CQ25に述べる鎮静前の患者評価,CQ28に述べる適切なモニタリングおよび緊急時に対応できる医療体制を整えて使用することを推奨する.1(強い推奨)(94.7%)A鎮静による小児の内視鏡検査では,どのような薬剤を,どのような準備をして用いるか?CQ27

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