2309稀少てんかんの診療指標
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第2章 疾患の特徴と診療指標66分てんかん,後天性てんかん性弁蓋部症候群,Landau-Kleffner症候群等)を含むスペクトラムとみる考え方もある.検 査1.脳波検査1)CSWS出現前:覚醒時脳波では焦点/多焦点性の棘波,鋭徐波もしくは棘徐波がみられることがあり,睡眠記録では突発波が頻度を増す.脳波のCSWS化は4~14歳.2)CSWS出現後:覚醒時は発症前と似ているが,より広汎性の所見が目立つようになる.特徴的な両側あるいは片側優位の広汎性1.5-2.5 Hz高振幅鋭徐波もしくは棘徐波がノンレム睡眠時に持続して出現.両側性の場合にはピーク潜時が一側に先行する.生理的睡眠パターンは不明確になる.レム睡眠時には大半の症例で広汎性突発波はほとんど消失し,しばしば限局性または多焦点性の棘ないしは鋭波へと変化する.2.その他の検査1)画像検査:CSWS患者の30~60%に神経放射線学的異常が報告されている.a.MRI:多種な病変がみられ,周産期血管障害,限局性皮質異形成,多小脳回,髄鞘化障害,水頭症,結節性硬化症,神経変性疾患,腫瘍等の報告がある.b.SPECT・PET:発作波出現部位に関連した灌流・取り込み上昇がみられることもある. 2)遺伝子検査:直接にCSWSとの関連が明らかになった遺伝子はないが,SRPX2,ELP4等が年齢依存性のてんかんと認知の障害と関連するとの報告がある.治 療 治療法は確立されていない.発作抑制にはバルプロ酸,ベンゾジアゼピン〔クロバザム,クロナゼパム〕,エトサクシミド,スルチアム,フェニトイン,新薬ではレベチラセタム等が有用である.ただし,効果が一時的にとどまり増悪改善を繰り返すことも少なくない.ラモトリギン(LTG)も有効例の報告はあるが,悪化例の報告もある.薬剤整理が有用な場合もある. CSWSと神経心理学的予後に相関があることが指摘されており,治療は発作症状の改善を主として行いながらも,神経心理所見の経過も詳細に追っていくことが大切である.CSWSの発現・持続に伴って神経心理学的退行あるいは停滞がみられるようであれば,積極的に治療が考慮され,副腎皮質ステロイド・副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法,ジアゼパム大量療法等も行われる.脳梁離断の有効例も近年報告されている. カルバマゼピン,フェノバルビタール,LTG,オクスカルバゼピンによりCSWSが悪化した報告もある.予 後 発作は,病変の有無,重篤度にかかわらず最終的に抑制されることが多い.てんかん発作持続期間は4~14年(平均12年).発作消失とCSWS改善がみられた患者においても,神経生理学的予後は必ずしもよいとは限らない.約半数に行動障害と知的レベルの低下が残存する.❖参考文献・OPatry G, et al.:Subclinical“electrical status epilepticus”induced by sleep in children. A clinical and electroen-cephalographic study of six cases. Arch Neurol 1971;24:242-252.・Proposal for revised classification of epilepsies and epi-leptic syndromes. Commission on Classification and Ter-minology of the International League Against Epilepsy. Epilepsia 1989;30:389-399.・Tassinari CA, et al.:Encephalopathy related to status ep-ilepticus during slow sleep (ESES) including Landau-Kleffner syndrome. In:Bureau M, et al.(eds), Epileptic syndromes in Infancy, Childhood and Adolescence. Fifth ed, John Libbey Eurotext, Paris, 2012;255-275.・Sánchez Fernández I, et al.:Treatment for continuous spikes and waves during sleep (CSWS): survey on treatment choices in North America. Epilepsia 2014;55:1099-1108.[国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター小児科] 池田浩子[国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター] 井上有史

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