2312アルポート症候群診療ガイドライン2017
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1 遺伝カウンセリング69ウンセリングを提供するか,または紹介する体制を整えておく必要がある. 遺伝学的検査やその結果の扱いは,以下に示すように,診療において行われる他の検査と異なる性質を有することを認識し,十分配慮する必要がある.生涯変化しない情報である 遺伝学的検査の結果は,一度結果を知ると,知らない状態には戻ることができない.また治療により正常化することもできない情報である.血縁者間で共有される情報である 検査を受けた本人のみならず,検査を受けていない血縁者の情報を含んでいる場合がある.検査を受けたのちに家系内に影響を及ぼす情報が得られることがある.予知性がある 未発症者において,将来の発症を予測することができる場合がある. よって,診療において遺伝学的検査が実施される際は,日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」に則ることが望ましい. 遺伝学的検査を行う際には,(1)発症者の診断,(2)非発症保因者診断,発症前診断,出生前診断,(3)未成年者の診断,のいずれを目的としているのかについて区別したうえでそれぞれ検討・実施することが重要である.特に(2)および(3)を行う場合,担当医は各学会の提言や見解を十分参考にし,遺伝カウンセリングを重ねたうえで検査を実施する慎重さが必要である1~3). 遺伝学的検査の事前説明と同意・了解(インフォームド・コンセント,未成年者の場合インフォームド・アセント)の確認は,原則として,主治医が行い,また必要に応じて,専門家(臨床遺伝専門医あるいは認定遺伝カウンセラー)による遺伝カウンセリングや意思決定のための支援を受けられるように配慮する. アルポート症候群は,COL4A5変異で発症するX連鎖型アルポート症候群(X-linked Alport syndrome:XLAS),COL4A3またはCOL4A4変異で発症する常染色体優性型アルポート症候群(autosomal dominant Alport syndrome:ADAS),常染色体劣性型アルポート症候群(autosomal recessive Alport syndrome:ARAS)の3種類の遺伝形式が知られている4). アルポート症候群の3タイプの中でXLASは全体の約80%を占め,最も頻度が高い5).一般に,X連鎖性遺伝性疾患は,有症状男性を契機に発見されることが多く,発端者男性の母親は,ヘテロ接合性に変異アレルを有する保因者の可能性がある.一般に,X連鎖性遺伝形式の疾患では,保因者女性の多くは無症状か,軽微な症状を認めるにとどまる.しかしながら,XLASにおいては,ヘテロ接合性に変異アレルを有する大部分の女性においても血尿を遺伝学的検査・診断を実施する際に考慮すべき遺伝情報の特性 2123遺伝学的検査の留意点 3アルポート症候群の遺伝カウンセリング 4

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