2316臨床遺伝学テキストノート
9/10

29|12|▶ 出生前診断で,おもに妊娠後期に行われる.前者では中枢神経系や軟部組織の形態異常,後者ではおもに骨系統疾患が疑われる症例で実施されることがある.着床前診断着床前診断は生殖補助医療と遺伝子解析技術の発展により生まれた新しい医療である.着床前診断は出生前診断の1つの方法という考え方もあるが,通常は妊娠してから検査するものを出生前診断,胚移植前の初期胚から検査するものを着床前診断とよんでいる.着床前診断は従来の出生前診断の結果として選択されることのある人工妊娠中絶を回避する目的で提唱され,1990年にはじめて報告された.国内では2004年にDデュシェンヌuchenne型筋ジストロフィーの遺伝子診断が日本産科婦人科学会承認のもとではじめて実施された.着床前診断は遺伝性疾患の受精卵診断として実施されるが,初期胚に多く発生している染色体の数的異常に対してスクリーニング検査を行う目的で実施されるものは着床前スクリーニングとよばれている.夫婦のいずれかが染色体転座保因者の時,体外受精の技術を使い卵割期の受精卵の一部の細胞を採取して,間期核FISH法,マイクロアレイ法で分析し正常または均衡型転座の胚を移植することによって,表現型正常の子を得ることが可能であるが,転座と関連しない表現型異常が出現することはあり得る.受精卵操作としては,①胚生検,②極体生検がある.また,胚盤胞生検も行われるようになってきている.生検された検体の解析方法としては,PCR法,マイクロアレイ法,次世代シークエンス法(▶p.108コラム8)などが用いられる.統計学について感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率(図)疾患の有無を検査する時,実際に疾患に罹っている人のうち陽性と出る割合を感度,疾患に罹っていない人のうち陰性と出る割合を特異度という.一般的には感度と特異度が高い時検査の信頼性が高いとされる.しかし検査で陽性と出たからといって,必ずしも実際に疾患の可能性が高いわけではないこともあるため,検査で陽性と出た人のうち実際に疾患に罹患している人の割合を陽性的中率(positive predictive value:PPV),陰性と出た人のうち実際には罹患していない人の割合を陰性的中率(negative predictive value:NPV)といい,検査の精度を示している.(鈴森伸宏)陽 性陰 性陽 性真陽性偽陽性陽性的中率=真陽性数/検査陽性数陰 性偽陰性真陰性陰性的中率=真陰性数/検査陰性数感度=真陽性数/実際陽性の合計特異度=真陰性数/実際陰性の合計検査結果真の結果図 感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る