2321医学生のための基本的臨床手技
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834診察編1 心臓診察3.心臓診察の基礎知識1)心尖拍動と胸壁拍動 心尖拍動と胸壁拍動の確認は,心臓診察の中で重要な項目であり,聴診の前に行います. 心尖拍動は,心臓が収縮するときに心尖部が胸壁に衝突することにより発生します.視診および指先と手掌による触診は,左鎖骨中線上第5肋間で左乳頭付近を中心に行います.心尖拍動は健常者でも視診で確認できることがあります.触診(図5)では,左側臥位45度(ベッド面と背部がなす角度)になってもらうとほぼ全員に確認できます. 一方,胸壁拍動は右室の病的拡大で生じます.健常者では観察できません.視診および手掌(近位部)による触診(図6)は胸骨下部と左傍胸骨部で行います.2)心音の聴取部位 聴診器で心音を聴くことができます.基本的には患者さんに仰臥位または左側臥位になってもらって,聴診をします.通常,5つの部位(図7)を順番に聴診します.正常では,Ⅰ音(低調で大きい音),Ⅱ音(高調で短い音)が規則正しく聴こえ,雑音などの異常音は聴こえません.①第2肋間胸骨右縁:大動脈弁が発する音を聴取しやすい領域です.②第2肋間胸骨左縁:肺動脈弁が発する音を聴取しやすい領域です.③ 第3肋間胸骨左縁:大動脈弁閉鎖不全症など多くの弁膜症が発する雑音を聴取しやすい領域です.Erbの領域とよばれています.④第4‒5肋間胸骨左縁:三尖弁が発する音を聴取しやすい領域です.⑤第5肋間左鎖骨中線上心尖部:僧帽弁が発する音を聴取しやすい領域です.⑤④③②①⑤僧帽弁領域④三尖弁領域③(Erb領域)②肺動脈弁領域①大動脈弁領域7654321図7心音の聴取部位①→②→③→④→⑤の順で聴診します.図5心尖拍動の触診図6胸壁拍動の触診

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