2332いま知っておきたい食物アレルギーケースファイル30
10/12

82第Ⅳ部 治療に工夫を要した症例・難渋した症例来院後の経過:食物アレルギーはなく食事制限の解除を説明し母子分離を含めた入院を勧めたが拒否し,外来フォローとした.しかし,種々の検査の拒否があり,生活様式の把握が困難なため児童相談所へ通告した.児童相談所は入院による委託一時保護を希望したが,病院・家族・児童相談所の話し合いの結果,再び外来経過観察となった.後に個人病院での食事制限指導は母の虚言であることが判明し,子ども虐待の一形式である代理ミュンヒハウゼン症候群と診断した.児が12歳のときに,意識障害を認め当院へ救急搬送され,ビタミンB1欠乏症と診断した.翌年にも同様のエピソードで入院したため,児童相談所と協議し強制母子分離の方針とした.診 断:代理ミュンヒハウゼン症候群.治 療:1)食事制限の解除,2)母子分離.診断・治療のポイント本症例では,児が通う小学校で校長が母の食物アレルギーの訴えを鵜呑みにし,学校生活管理指導表の提出なしに厳密な除去食対応をしていた.具体的には昼食時に校長室で白米の摂取のみを続け,本来不要な食事制限が表面化していなかった.ここで,食物アレルギーの学校生活管理指導表による医師,学校の正しい連携があれば,母の虚偽を避けられた可能性が考えられた.食物アレルギー児の学校での食事対応が必要な場合,医師の診断のもとに記載される学校生活管理指導表の正しい活用が必要である1,2).患者支援のポイント小児医療関係者は,今援助されなければ後がない被虐待児を扱っていることを常に意識すAge(years)130120110100908070605025201510BW(Kg)B. Ht.(cm)0123456789101112紹介転居症例図本症例の成長曲線・症例 9歳 男児・医療機関を次々と受診.・医療機関受診のたびに母の発言が変化.・ 食物アレルギーのため厳格な除去食で,米のみ摂取可能と虚偽の報告あり.・2年前からの体重増加不良が先行し,患児の状態が極めて不良.・ 9歳になり16kg(-2.3SD)と,著明な体重減少と歩行困難・立位困難が出現.・診断は被虐待児症候群(代理ミュンヒハウゼン症候群).

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る