2332いま知っておきたい食物アレルギーケースファイル30
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iiiこのたび,第54回日本小児アレルギー学会学術大会の会長という大役を仰せつかり,2017年11月,栃木県宇都宮市にて開催することとなりました.本学術大会では日光東照宮の三猿からヒントを得て,積極的に大会へご参加いただきたいという意味で「見る・言う・聞く」の「新三猿」をロゴといたしましたが,今回,学術大会を主催するにあたって,臨床の場で役立つさらなる情報をこの栃木の地から発信できないかと考えておりました.そのような折,日本小児アレルギー学会から『食物アレルギー診療ガイドライン2016』が発刊されました.これは5年ぶりの改訂で,「正しい診断に基づいた必要最小限の食物除去」,「原因食品を可能な限り摂取させるにはどうすればよいか」という,いままで以上に積極的な診療の方向性を示しているといえます.さらに,「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」がプレスリリースされたことは,食物アレルギーとその診療についての社会的な関心の高まりを表しているといえるでしょう.一方で,実際の現場ではどのようなことが起こっているかというと,診断や治療に苦慮する例,患者やその家族への対応に苦慮する例など,困りごとはまだまだたくさんあります.そこで,栃木県小児アレルギー研究会,栃木県小児アレルギーエデュケーターおよび獨協医科大学小児科学教室の教室員,研究生,関連病院などの医師らによって,現在までの経験から,興味ある食物アレルギー診療に関する症例集を作成することにしました.事前に詳細な症例アンケートへご協力をいただきました先生方,またご執筆をいただきました先生方に心より感謝申し上げます.おかげさまで,知っておくと役立つであろう多くの症例を集めることができました.本書の特徴として,それぞれの症例をケースファイル形式にて,診断・治療のポイント,患者支援のポイントを簡潔に記載しました.看護師,薬剤師,管理栄養士といった様々な職種のPAE(小児アレルギーエデュケーター),学校関係者,行政担当者にも執筆にご参加いただき,食物アレルギー診療におけるメディカルスタッフとのチーム医療,地域連携の必要性についても言及しました.理解いただきたい疾患概念やトピックスも適宜取り上げ,まさにいま知っていただきたいポイントをコンパクトにまとめました.本書が,明日からの食物アレルギーの診療に役立つことを心から祈念しております. 2017年10月獨協医科大学医学部小児科学講座主任教授吉原重美序 文

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