2335はじめて学ぶ小児血液・腫瘍疾患
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不適切な保管などによる血液凝固や溶血がしばしばみられる.●異常値と判定するための基準範囲は本項の表1,Ⅱ—1「白血球数・分画に異常がある」の表1,本項の5.「血小板の異常をどうみるか」を参照(なお,正常範囲という言葉は,死語!).●Hb,白血球数,血小板数の増減はないか? どれが最も異常か? どれか1つか,2つか,または3つか? さらに,以前の結果があれば変化をみる.血算に加えて,病歴,身体所見,ほかの検査所見と比較して総合的に判定する(表2).●異常値をみたときには,産生の低下か,破壊の亢進かを念頭に置いて鑑別することをすすめる(表3).産生が低下した際には血球の寿命を知っていると,病態把握を誤らない(→Memo 1参照).2.赤血球の異常をどうみるか1)血算で赤血球異常をみるコツ①Hb:貧血.②白血球数・血小板数:減少ならば要注意.③網赤血球数:つくっているか? ④MCV:赤血球の大きさ.⑤塗抹標本:破砕赤血球,球状赤血球,涙滴赤血球.⑥血清鉄,血清フェリチン:鉄の欠乏? 利用障害? 過剰? ⑦クレアチニン:腎機能.⑧LDH,ビリルビン:溶血.●網赤血球数は赤血球数に対する%,または‰で表記されることが多い.血液1μLあたりの絶対数で判断することをすすめる.●網赤血球数の基準範囲(表3参照):生後1日:0.4~6.0%,小児・成人:0.5~1.5%,絶対値25,000~75,000/μL,>100,000/μLは増加と判断する.●MCVによる鑑別:小球性<80fL,正球性80~100fL,大球性>100fL.●貧血の鑑別診断はⅡ—3「貧血の鑑別をしたい」を参照.2)追加検査●網赤血球数,塗抹標本:貧血があるときは必須.●血清鉄,血清フェリチン:鉄欠乏性貧血の鑑別に必須.1511 血算の見方Ⅴ役立つ知識血算をみるコツ①血算の変化:以前との比較②血算に加えて:病歴,身体所見,ほかの検査所見と比較③赤血球,白血球,血小板:どれが最も異常?④Hb減少:MCVと網赤血球数に注目して鑑別⑤白血球数増加または減少:分画のどれが異常?表1血球異常の代表的な鑑別診断血球異常鑑別疾患産生減少骨髄占拠白血病幹細胞減少再生不良性貧血,抗腫瘍薬,放射線材料減少鉄欠乏性貧血,悪性貧血破壊増加赤血球溶血性貧血好中球自己免疫性好中球減少症血小板免疫性血小板減少症(ITP)表2 ①赤血球:120日.②リンパ球:数日~数か月~数年.③血小板:10日.④好中球:数時間~1日(血中),数日(組織). 血球が産生されなくなると,最初に好中球が減って,次に血小板が減少する.ただし,好中球が減ってもリンパ球はすぐには減らないので,白血球が減少するには時間がかかる.そのため,最初に血小板が減少したときには白血球と赤血球が正常ということがしばしば起こる.Memo 1血球の寿命

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