2339小児臨床栄養学 改訂第2版
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88第3章 発育段階別・年齢別・階層別の栄養の基礎知識 学童期および思春期は,身体的に成人の体へと成長,成熟が進むとともに,精神的にも徐々に親から離れ,仲間や親以外の大人からの影響を受けながら自立へと向かう時期である.学童期・思春期のエネルギー必要量は,身体の成長,成熟が著しい時期には一般的に増加する.しかし,この時期は,運動量の違いなどでエネルギー消費量の個人差が大きくなるなど,エネルギー必要量の個人差も生じやすくなる.一方,この時期の栄養状態は,二次性徴の開始や性腺の成熟,さらには性腺機能の維持にも関与する.エネルギー摂取量の過不足のアセスメントには,定期的に計測した身長・体重をプロットした成長曲線の評価が重要である. 近年,子どもの生活リズムの乱れが指摘されている.朝食欠食を含むアンバランスな食事内容による栄養素摂取の偏りだけでなく,孤食の増加などとも関連して,親子,家族の会話など人間相互のかかわりの不足も懸念されている.子どものすこやかな心身の発育のためには,「なにを」「どれだけ」食べるか,「いつ」「どこで」「誰と」「どのように」食べるかということも重要である.厚生労働省は,そうした食育の観点から,子どもの発育・発達過程に応じて育てたい「食べる力」を提示している(表1)1).学童期・思春期は,乳幼児期とは異なる食育の課題を有していることがわかる. 学童期・思春期は,食品をみずから選択する機会が増える時期である.しかし,その過程においては知識不足や無関心,交友関係の拡大,さらには現代の食環境の影響などから,食生活の問題を生じやすい. 現代の食環境では,いつでもどこでも簡単に食品を得ることが可能であり,過食になりやすい.特にファストフードに代表される高エネルギー,高脂肪,低食物繊維の食品,およびスポーツ飲料を含む清涼飲料水の過剰摂取は,肥満や栄養の偏りを生じる可能性がある.一方で遊びの内容の変化などを反映して,慢性的な運動不足やストレス下にあることも肥満傾向になる要因といえる.なお,学童期・思春期の肥満は,成人期へともち越されることが多いだけでなく,この時期の生活習慣(食習慣・運動習慣)そのものが成人後の循環器疾患の発症,およびその危険因子に影響を与える可能性も示唆されている. 近年,わが国の肥満傾向児(肥満度+20%以上)の割合は,2000~2005年のピーク時と比較し減少傾向ではあるが,2017年度においても小学校高学年以降,男子では10%前後,女子でも8%前後と多い(表2)2,3).Ⅰライフコースからみた特徴Ⅱ食育の観点による課題Ⅲ食生活における問題a肥満・過食第3章 発育段階別・年齢別・階層別の栄養の基礎知識E学童期・思春期nutrition in school age and adolescence ●学童期・思春期は,身体的な成長・成熟,および精神的な自立が進む時期である. ●エネルギー消費量など個人差が大きくなる時期であり,エネルギー摂取量の過不足のアセスメントには,身長・体重の成長曲線の評価が重要である. ●食品をみずから選択する機会が増え,肥満・やせのほか,朝食欠食・偏食・孤食などの食生活の問題に対する注意が必要である.ポイント

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