2339小児臨床栄養学 改訂第2版
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340第7章 食行動異常への対応1定義と概要 偏食は幼児期にみられる食の問題であり,定義として「食品の好き嫌いが極端であり,ある特定の食品を食べられない」ことである.ただし,好きなものしか食べない,食べる時間が定まらず,好きなときに食べることを含める場合もある1). 離乳食が終了し,成人の食事内容に変遷する時期に偏食を認めるようになる.2~3歳頃から自我の発達がみられて,自己主張が始まる.食事についても好き嫌いを訴えるようになり,偏食として認められる.また3歳から味の記憶が始まる2).野菜は苦みを感じやすいため,子どもにとって野菜は不得手となる.そのため,偏食の食品として,野菜があげられることが多い. 「平成27年度乳幼児栄養調査」の「現在子どもの食事について困っていること」(2歳~6歳)の質問において,2歳~3歳未満では,「遊び食べをする」との回答が1番多かった(41.8%)3).そのほかの年齢(3歳~4歳未満,4歳~5歳未満,5歳以上では「食べるのに時間がかかる」であった.全年齢を通じて,「偏食」が30%前後であった.そのほかには,「むら食い」,「食事よりも甘い飲み物やお菓子を欲しがる」,「小食」,「早食い,よく噛まない」,「食べ物を口の中にためる」などが続く.幼児期において,偏食は,非常に身近な食行動の問題である.「困ることは特にない」と回答した割合が最も高い5歳以上でも,22.5%であった.総じて,80%以上の保護者が子どもの食事について,困りごとを抱えていた. ただし,食生活が豊かとなり,食材の種類が豊富である現在においては,栄養学的に代替できる食品が多様に存在し,選択できるため,少々の偏食があっても,極端な栄養不良に陥ることはほとんどない.栄養学的な見地では,偏食は大きい問題にならないかもしれないが,小児期に培われた食生活習慣は,その後の健康的な食生活を形成・維持に多大な影響を与える.そのため,幼児期にできるだけ多彩な食品の味覚・食感を体験するのが望ましい4).2原因と病態 偏食の原因として,家庭環境・養育の問題および小児自身の問題などがある5). 家庭環境・養育については,①食品および料理のレパートリーが限られているため,十分な食体験が得られない,②家族にも偏食者がいる,③小食・食欲不振である,④調理法あるいは味つけが年齢相当でない,⑤無理に食事をさせたことがある,⑥食品のにおい,味,色,形,感触が気に入らない,⑦偏食の対象となる食品あるいは料理に対して,不快な印象あるいは経験をもつ,などが問題としてあげられる.さらに小児自身の問題として,①小児自身が神経質になっている,②弟妹の誕生により,両親の関心を自分に引くために「好き嫌い」を言う,③反抗期のため,④う歯がある,⑤食物アレルギーがあるなどである. また,自閉症スペクトラム障害の小児において,偏食がみられることがある.自閉症スペクトラム障害とは,社会性の障害,コミュニケーションの障害およびイマジネーションの障害を特徴とする発達障害である.自閉症スペクトラム障害では,感覚刺激への反応に偏りを認め,聴覚・視覚・味覚・嗅覚・触覚・痛覚・体内感覚などすべての感覚領域で鈍感Ⅰ偏 食a概 念第7章 食行動異常への対応C偏食・ばかり食い・むら食い・遊び食いunbalanced diet・addiction to the same food・inconsistent eating・play while eating ●偏食の予防には,離乳期の食生活が重要である. ●偏食の対応では,調理の工夫,整った生活リズム,楽しい雰囲気の食事,食べ物への興味が重要である. ●子どもに食事を強要することなく,家族でゆとりをもった楽しい雰囲気の食事をすることに努める.ポイント

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