2341てんかん学用語事典 改訂第2版
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127RR◆◆概念 おもに小児期(稀に成人期)に発症し,一側大脳半球の慢性炎症を病理学的特徴とする免疫介在性疾患で,焦点性のてんかん発作が難治に経過し,焦点側大脳半球は進行性に萎縮して運動障害・知的障害があらわれる.〔解説〕◆◆診断基準 臨床症状,脳波,MRI,病理組織所見に基づいて診断される1).焦点性運動発作と片麻痺が進行性に出現し,これらの神経症候を説明できる脳波,MRI所見が確認されれば本症と診断される.頭部MRI T2強調/FLAIR画像では,大脳皮質・白質や尾状核に造影効果のない異常高信号がみられ,罹患側大脳半球は進行性に萎縮する.診断が困難な場合には,生検による病理組織診断が必要となり,細胞傷害性Tリンパ球の浸潤,グリオーシス,ミクログリアの活性化といった慢性炎症の像がみられる.◆◆症状 多くは小児期に発症し,初回のてんかん発作は一側性の焦点性発作あるいは二次性全般化けいれんである.数カ月から10年間(平均2~3年間)の経過でてんかん発作は頻回となり,片麻痺が出現する.約半数の患者には,epilepsia partialis continua(EPC)が出現する.EPCは,意識消失を伴わない焦点性運動発作の重積状態を示し,一側の上下肢あるいは手指などの持続性ミオクローヌスあるいは間代発作として出現する.全身性けいれんへは進展せず,1時間以上も持続する.◆◆原因 感染症に引き続く自己免疫反応の関与が推定されている.患者の脳には,細胞傷害性T細胞が浸潤しており,その細胞から分泌されるタンパク分解酵素gran-zyme Bにより神経細胞はアポトーシスに陥ると考えられている2).このような脳内での炎症は,一側大脳半球に限局し,病変は連続性を示さずに散在する傾向があり,さらに進行性の経過をとる.このような病理学的特徴を説明できる十分な根拠は明らかにされていない.◆◆治療 抗てんかん薬の効果は乏しく,ステロイドパルス療法,免疫グロブリン療法,タクロリムス療法などの免疫調整薬治療も行われるが,その効果は一時的であることが多い.てんかん発作が持続し,片麻痺症状によりQOLが低下してきた場合には,半球離断術が検討される.◆◆予後 てんかん発作は難治に経過し,しだいに片麻痺と知的障害が出現し,適切な治療がないと不可逆的な神経障害を残す.半球離断術の術後5年の予後をみると,およそ70%の患者ではてんかん発作は完全に消失し,認知機能は術前のレベルに維持されている3).術後に認知機能が改善する例は少ないが,本症が慢性進行性の疾患であることを考慮すると,半球離断術は有効な治療法といえる.文  献 1) Bien CG, et al. Pathogenesis, diagnosis and treatment of Rasmussen encephalitis:a European consensus statement. Brain 2005;128:454‒471. 2) Bien CG, et al. Destruction of neurons by cytotoxic T cells:a new pathogenic mechanism in Rasmussen’s encephalitis. Ann Neurol 2002;51:311‒318. 3) Pulsifer MB, et al. The cognitive outcome of hemispherec-tomy in 71 children. Epilepsia 2004;45:243‒254.(髙橋 悟)◆◆概念 言語に関わる行為,特に読書によって口腔顔面のミオクローヌスや焦点性発作が誘発される反射てんかんの一つで稀なものである.おもに早期成人期に発症し(10~40歳),男性に多い(男女比は約2:1).予後は良好.Rasmussen syndrome( Chronic progressive epilepsia partialis continua of childhood)ラスムッセン症候群(小児慢性進行性持続性部分てんかん)Reading epilepsy読書てんかんReading

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