2343わかりやすい予防接種 改訂第6版
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64第1部 予防接種の準備接種の相談を受けることが時にあります.1~2歳頃から接種を開始するのであれば通常の方法で問題ありません.しかし5歳,10歳と極端に遅くなると2つの問題が出てきます.1つは接種するワクチンをDPT-IPVにするかDTトキソイドにするかという問題です.もう1つはDTトキソイドを接種する場合に,副反応(局所反応)を軽減する目的で接種量を0.5mLから0.1mLに減量して接種するかどうかという問題です. 百日咳は乳児期早期に罹患した場合,生命的な危険性が高い疾患です.これより年長になって罹患した場合,罹患した本人の生命的な危険性は減少し,百日咳ワクチン接種による個人防衛的なメリットは少なくなります.このため無理にDPT-IPVを接種する必要性はなくなり,その代わりにDTトキソイド接種で済ませることも可能となります(ただし,この場合は当人が罹患した百日咳菌の感染を周囲の乳幼児に広げるという危険性が残ります). 予防接種ガイドラインではDPT-IPV1期接種の開始が極端に遅れた場合,何歳からDPT-IPVに代えてDTトキソイド接種に変更したらよいかに関する記載はありません.“Red Book”によると,アメリカのDTaPワクチンは7歳未満の接種対象に対してしか認可されていないので,7歳以降に開始する接種には使用しないよう指示されています.日本のDPT-IPVの場合もほぼ同様に現在の接種対象者は7歳6か月(90か月)未満とされ,ここまでは定期接種の枠内で接種が可能となっています. 以上のような状況を踏まえ,現時点における年長児でのDPT-IPV/DTワクチンでの初回免疫の接種法案を表10に示しますので参考にしてください.なお現在,世界的には年長児の百日咳罹患を減年 齢初回(1)初回(2)初回(3)追 加7歳6か月未満DPT-IPV 0.5 mLDPT-IPV 0.5 mLDPT-IPV 0.5 mLDPT-IPV 0.5 mL7歳6か月~10歳未満DT 0.5 mLDT 0.5 mL*1(-)DT 0.5 mL10歳以上DT 0.1 mLDT 0.5 mL*1,*2(-)DT 0.1 mL*1: DTトキソイドの1回目と2回目の間隔は4~8週.DTトキソイドによる初回接種は2回で終了し,1年後に追加接種する.*2 : 前回の局所反応が強い場合は増量しない.表10 DPT-IPV第1期の開始が遅れた場合

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