2348マクギーのフィジカル診断学 原著第4版
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Chapter 14 Cushing症候群773Part患者の外観出血斑がある.おそらく皮膚の菲薄化はコルチコステロイドによる表皮細胞分裂や皮膚コラーゲン合成の阻害で生じる14.皮膚の厚さを測定する際は,カリパス(皮膚測定用もしくは心電図判定用)を用いて,皮下脂肪がなく表皮と真皮のみの厚さが測定できる手背で行うように,多くの専門家は推奨している22,23.生殖年齢の女性では,この皮膚の厚さが1.8 mm以上ある22.男性(通常は女性よりも皮膚が厚い)や高齢者(通常は若年者よりも皮膚が薄い)における正確なカットオフ値は確立されていない23.Cushing症候群の患者における皮膚線条は幅が広く(>1 cm)濃赤色もしくは紫色であり,様々な原因による急激な体重増加で生じる薄いピンク色や白色の皮膚線条とは対照的である4,24.皮膚線条は通常下腹部に生じるが,殿部,股関節部,腰部,大腿部,上腕部でも生じることがある.Cushing症候群の患者で下腹部から腋窩にかけて幅の広い皮膚線条を生じたとの報告もある2.病理学的には,皮膚線条はコラーゲン線維が力の加わる向きに整列した真皮の創であり,異常に薄い表皮に覆われている25.皮膚線条の発生機序は明らかになっていないが,脆弱化した皮膚の結合組織が中心性肥満によって引き伸ばされ,破れることで薄く半透明になり,赤色や紫色の真皮血管がみえることによって生じていると思われる.Cushing症候群の皮膚線条は高齢の患者よりも若年の患者で多い24,26.Plethoraとは異常な所見で,びまん性に赤色もしくは紫色となった顔をいう4.副腎アンドロゲンの増加により多毛症やざ瘡を生じる14,24.結合組織による支持や防御機能を失った血管が損傷されやすいため,出血斑を生じやすいと考えられる.皮膚線条,ざ瘡,多毛症はコルチゾールの値とほとんど相関しておらず,そのことはこれらの身体所見において他の因子(時間的,生化学的,遺伝的)が重要な役割を果たしていることを示唆している24.D.近位筋の筋力低下下肢近位筋の筋力低下はCushing症候群,特に高齢者で頻度が高く顕著な所見である26.この筋力低下は真のミオパチーであるため,線維束攣縮,感覚障害,深部腱反射異常は生じない.Chap-ter 61で近位筋の筋力評価の方法を述べている.E.抑うつCushing症候群の患者は,すぐに泣いてしまうというエピソード,不眠,集中力の低下,記憶障害,自殺企図を有することがある27,28.抑うつの重症度はコルチゾール値と相関があり27,内分泌症状よりも年単位で先行していない限り,通常は治療で劇的に改善する28.F.偽性Cushing症候群慢性アルコール依存症,抑うつ,HIV感染症を含むいくつかの疾患は,身体所見や生化学検査所図14.1 Cushing症候群における脂肪組織の分布頬部が丸くなり,両側頭部に顕著な脂肪蓄積により特徴的な満月様顔貌となる.脂肪は両側の鎖骨上部(鎖骨上部の襟),胸骨前部(胸骨上部,肉垂),後頸部(水牛様脂肪沈着)にも蓄積される.このイラストでは,Cushing症候群ではない患者の正常な輪郭を点線で示している.側頭部鎖骨上部胸骨上部肩甲骨背側

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