2348マクギーのフィジカル診断学 原著第4版
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Part 3 患者の外観78見がCushing症候群と類似するため,偽性Cush-ing症候群とよばれる.慢性アルコール依存症の患者はCushing症候群と同様の身体所見や生化学検査所見を呈することがあり,ほとんどが視床下部下垂体軸からのACTH過剰分泌による所見であり,数週間禁酒すると消失する29,30.抑うつの患者はCushing症候群と同様の生化学検査所見を呈することがあるが,身体所見は伴わない31.HIV感染症の患者,特にプロテアーゼ阻害薬を投与されている場合は,Cushing症候群と類似するいくつかの身体所見(特に水牛様脂肪沈着や中心性肥満)を呈することがあるが,生化学検査所見が異常となるのはまれである32-35.A.所見の診断精度EBM BOX 14.1はCushing症候群を疑われた303症例に用いられた身体所見の診断精度を示している.Cushing症候群の可能性を大きく高める所見は,薄い皮膚(LR=115.6),出血斑(LR=4.5),中心性肥満(LR=3),plethora(LR=2.7)である(薄い皮膚のLR=115.6という天文学的値は,多毛と月経不順で受診した若年女性から求められたものであり,同様の患者にのみ適応できる).Cush-ing症候群の可能性を低くする所見は,全身性肥臨床的意義ⅢEBM BOX 14.1 Cushing症候群*所 見(文献)†感 度(%)特異度(%)尤度比(LR)‡所見あり所見なしバイタルサイン高血圧4,1225~3883~942.3 0.8顔貌・体型満月様顔貌1298411.6 0.1中心性肥満4,12,1372~9062~973.0 0.2全身性肥満44380.1 2.5BMI >30 kg/m2 3631260.4 2.6皮膚所見薄い皮膚227899115.6 0.2Plethora 483692.7 0.3多毛(女性)4,12,2647~7648~71NSNS出血斑4,12,3638~7169~944.5 0.6赤色や青色の皮膚線条4,12,3641~5261~78NS0.8ざ瘡4,3625~5261~76NSNS四肢所見筋力低下4,12,3628~6369~93NSNS浮腫4,1238~5756~831.8 0.7*診断基準:Cushing症候群:1日のコルチゾールまたはコルチコステロイドの代謝産物が増加し,日内変動が消失し,デキサメタゾン抑制試験で異常を示すもの.†所見の定義:高血圧:拡張期血圧>105 mmHg.中心性肥満:中心性肥満指数が1を超える13もしくは主観的な四肢を除く中心性肥満の見た目4,12.薄い皮膚:手背部の皮膚の厚さ<1.8 mm(生殖年齢の女性のみ)22.‡所見がある場合の尤度比(LR)=陽性LR,所見がない場合のLR=陰性LR.NS:有意差なし.

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