2348マクギーのフィジカル診断学 原著第4版
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Chapter 3 本書の表の利用法172Partエビデンスを理解するC.解 釈“身体所見の頻度”の表は身体所見の感度だけしか示していないため,ある身体所見がないことは疾患がないことを示すだけであるが,感度(もしくは頻度)が95%以上の所見が陰性であれば,診断がほぼ異なることを強く示唆することができ,有用である(仮に所見の特異度が50%程度と低い場合であっても,陰性LRは0.1以下となるため).表3.1で示した頸静脈の怒張はそのような意味合いの所見である.臨床医が収縮性心外膜炎を考慮したときにベッドサイドでの頸静脈圧が正常であると推定できれば,その診断の可能性は低い.同様に,感度が80%以上である独立した身体所見が2~3個同時にない場合も,その疾患の確率はかなり低くなる(独立した所見の定義はChapter 2を参照)*.*:この記述は組み合わされたLRの積が0.1以下になることを想定している.したがって, LRn=[(1-感度) / (特異度)]n ≦0.1 となる(nは組み合わされた所見の数である).もし所見の特異度が50%以下であれば,組み合わされる所見が2つの場合は感度が84%以上必要であり,組み合わされる所見が3つの場合は感度が77%以上必要である.A.定 義“診断精度”の表は,同様の症状をもち,異なる診断であった患者のデータから得られた研究をまとめたものである.EBM BOXには身体所見の感度,特異度,陽性および陰性LRが表示されている.それらの指標はある身体所見が,臨床医が想定する疾患の有無を区別するのに有用である.EBM BOX 3.1は肺炎の身体所見の診断精度についてまとめたものであり,咳嗽と喀痰のある多数の患者に使える(詳細なEBM BOXはChap-ter 32を参照).これらの研究では,20%の患者のみが肺炎の診断を受けており,咳嗽と発熱のそのほかの原因疾患は副鼻腔炎,気管支炎,鼻炎な“診断精度”の表(EBM BOX)Ⅲ表3.1 収縮性心外膜炎*身体所見頻度(%)†頸静脈頸静脈の怒張95大きなy谷(Friedreich徴候)57~100Kussmaul徴候21~50動脈拍動不規則な不整(心房細動)36~70血圧奇脈 >10 mmHg17~43心臓の聴診心膜ノック音28~94心膜摩擦音3~16その他肝腫大53~100浮腫70腹水37~89*診断基準:収縮性心外膜炎については,外科的所見や剖検所見であるが1-5,場合によっては血行動態所見が組み合わされている6-10.†結果は全体として頻度の平均であるが,統計的に不均一であれば値の範囲で示した.参考文献1~10の282名より引用した患者データ.

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