2348マクギーのフィジカル診断学 原著第4版
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Chapter 3 本書の表の利用法192Partエビデンスを理解するが陽性LRであり,“身体所見がない場合の尤度比”が陰性LRである.値の範囲で表示されている感度と特異度とは異なり,LRはランダム効果モデルという統計的手法を用いて単一の値として表わされる(本章の「尤度比のまとめ」を参照)21.EBM BOXでは統計的に有意なLRのみ表示されている.LRは陽性,陰性のどちらであっても95%信頼区間(CI)に1という値が含まれていれば,その身体所見の結果からは疾患の有無を統計的に判別することができないために,EBM BOXには“NS” (not signicant = 有意差なし)と記載している.尤度比に関する訳注 我々監訳者は尤度比(LR)の記載方法について,著者のSteven McGee先生とやりとりを行った.原著ではMcGee先生の意向でChapter 3~70までのすべてのEBM BOX内の尤度比の記載を,その所見の有無(Like-lihood Ratio if Finding Is・・・)として記載している.これは仮にある所見の「陽性尤度比」・「陰性尤度比」とだけ記載した場合,その所見が存在する際にどれくらいある疾患にrule inできるかというものであればわかりやすいが,実際にはその所見がないということ自体がある疾患の絞り込みに関連していることがあるためだ.これは初学者に対して混同を招きやすいので,所見が存在する場合,存在しない場合に分けて記載している. 一方で,巻末の付録:APPENDIXの表はそのまま95%信頼区間を含む「陽性尤度比」・「陰性尤度比」の用語を用いて示しているので,その所見が存在する場合,存在しない場合を考慮して役立ててほしい.4.脚 注EBM BOXの脚注には研究に使用された診断基準や,必要があれば所見の定義が表示されている.たとえば,EBM BOX 3.1の脚注では,肺炎の診断基準が胸部X線検査であることが示されており,またEBM BOXの下段に記載されているHeckerling診断スコアの項目についても述べられている.C.EBM BOXの解釈EBM BOXを使用するにあたっては,LRの列をみるだけでそれぞれの所見がどの程度疾患を区別できるのかを正しく評価することができるようにしてある.LRが最も大きい所見が疾患の確率を最も上昇させ,LRが0に近い所見が疾患の確率を最も低下させる.LRが3以上もしくは0.3以下のすべての所見は太字で強調されているため,どの身体所見が疾患の確率を20~25%(LR≧3)上昇させたり,20~25%低下(LR≦3,Chapter 2も参照)させたりするかを即座に理解することができるようにしてある.咳嗽と発熱のある患者であれば(EBM BOX 3.1参照),独立した所見として肺炎の確率を最も上昇させるのはヤギ声(LR = 4.1),悪液質(LR = 4),気管支呼吸音化(LR = 3.3),そして打診での濁音(LR = 3)である.その一方で,このEBM BOXのなかには肺炎の確率を大きく低下させる独立した所見はない(LR ≦0.3の所見はない).EBM BOX 3.1ではHeckerling診断スコアが4点以上であれば肺炎の確率が大きく上昇し(LR = 8.2),0もしくは1点であれば大きく低下することが示されている(LR = 0.3).本書のEBM BOXのなかのすべての研究は成人患者が対象であり,かつ以下の4つの基準に合った研究を掲載した.A.患者に症状がある研究には,症状があったりその他の問題があったりすることで,医療機関を受診した患者が必ず含まれていなければならない.症状のない対照群を利用した研究は,身体所見の特異度を不当に増加させてしまうため,除外されるべきである.医師は肺炎患者と受診する必要のない健常者を区別“診断精度”の表に採用されている研究の基準Ⅳ

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