2348マクギーのフィジカル診断学 原著第4版
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Part 2 エビデンスを理解する20するために身体所見を利用しようとは考えず,むしろ身体所見を用いて肺炎とその他の咳嗽,発熱をきたす疾患を区別することを重要視するはずである.B.身体所見の定義身体所見は研究のなかで明確に定義されていなければならない.C.診断基準に含まれない独立した比較要件妥当な診断基準に含まれていない独立した比較要件がなければならない.“独立した比較要件”とは診断基準に見合う患者の選択に,その身体所見が含まれていないことを意味する.“妥当な診断基準”には検体検査,画像検査,外科的所見,あるいは剖検所見などが含まれている.D.2×2表が構成可能であること研究では,2×2表を構成可能であり,感度,特異度,およびLRを計算するための数字が含まれた図や表が提供されていなければならない.もし2×2表のセルに0という値が含まれていれば,すべてのセルに0.5を加え,0や無限大といったありえないLRが算出されてしまうことを避けている.DersinmonianとLaird 21によるランダム効果モデルは,個々の研究と複数の研究間の両方の分散を用いてpooled LR(集約されたLR)を計算する手法であり,本書において複数の研究からLRを算出するのに使用されている.表3.2はこのモデルがどのように機能するかを示している.この表の上段にはEBM BOX 3.1に記載されているヤギ声についてのすべての研究の個別のデータが書かれており,研究の感度,特異度,陽性あるいは陰性LR,および95% CIが含まれている.表3.2の最下段には,本書を通じてどのようにこれらの情報がまとめられているかを示している.個々の研究では,ヤギ声は特異度が高いが(96~99%),感度は高くない(4~16%).陽性LRはすべて1を超えており,ヤギ声が肺炎の確率を高めることが示唆される.3つの研究のなかの1つは(Gennisら13),陽性LRは95% CIが1を含んでいるので統計的に有意ではない.その他の2つの研究では,陽性LRの95% CIには1が含まれていないため統計的に有意である.この表の4行目には陽性LRを要約した値が記されており,臨床的にも(4.08, 大きな陽性値),統計的にも(95% CIに1が含まれていない)有意な所見であることがわかる.すべての情報は本書の表記法に従っており,要約されたLRは4.1と単純化され表記されている(関心のある読者がいれば,本書の「付録:APPENDIX」にすべてのLRの95% CIが記載されているので確認されたい).それに対して,陰性LRは臨床的にはわずかにしか有意でなく(すなわち,0.87~0.96:値がほぼ1に近い),3つのうち2つの研究は統計的に有意ではない(すなわち,95% CIは1を含んでいる).集約された陰性LRは臨床的にも統計的にも有意ではない.統計的には1.0と同等であり(すなわち,尤度比のまとめⅤ表3.2 ヤギ声と肺炎:個々の研究文献感度(%)特異度(%)陽性尤度比(95%CI)陰性尤度比(95%CI)Heckerling 1216974.91 (2.88, 8.37)0.87 (0.81, 0.94)Gennis 138962.07 (0.79, 5.41)0.96 (0.90, 1.02)Diehr 114997.97 (1.77, 35.91)0.96 (0.91, 1.02)まとめた結果4.08 (2.14, 7.79)0.93 (0.88, 1.01)本書の表記法4~1696~994.1NSNS:有意差なし.

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