2348マクギーのフィジカル診断学 原著第4版
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Part 3 患者の外観76上腕,大腿,下腿)の周径の合計で割る.指数が1を超えると異常と判断する13.(3)腹囲/ヒップ周径比(WHR)の異常(男性 1以上,女性 0.85以上;Chapter 13参照)で定義される肥満14.WHRの異常による中心性肥満の診断は,Cush-ing症候群などの偽陽性が多いため推奨されていない.他の特徴的な所見として,両側頭部の脂肪蓄積(満月様顔貌)15,両肩甲骨間と後頸部の脂肪蓄積(水牛様脂肪沈着),鎖骨上部への脂肪蓄積(頸基部を取り巻くように「襟」ができる)14,胸骨前部への脂肪蓄積(牛の首の付根にある垂れ下がった皮膚にちなんで,肉垂とよばれる;図14.1)がある16.多くの専門家は水牛様脂肪沈着はCush-ing症候群に特異的ではなく,いかなる原因の肥満でも生じうると考えているが17,18,この仮説はしっかりと検証されていない.Cushing症候群では病的肥満はまれである19.Cushing症候群の中心性肥満は,皮下脂肪ではなく内臓脂肪の増加を反映しており20,グルココルチコイドによる脂肪分解活性の減少とトリグリセリドを組織に蓄積させるリポ蛋白リパーゼの活性化がその原因である.B.高血圧Cushing症候群の患者4人のうち3人は高血圧となる.想定される機序として,降圧機構(プロスタグランジン,カリクレイン-キニン系)の抑制や血管作動性物質に対する過剰反応があり,レニン-アンジオテンシン系の活性化も関与している可能性がある21.ほとんどの患者は塩分と水分のバランスが取れていない14.C.皮膚所見Cushing症候群と関連する特徴的な皮膚所見として,薄い皮膚,皮膚線条,多毛(女性),ざ瘡,表14.1 Cushing症候群―それぞれの所見頻度*身体所見†頻度(%)‡バイタルサイン高血圧64~88顔貌・体型満月様顔貌67~92中心性肥満44~97水牛様脂肪沈着(bualo hump)34~75皮膚所見薄い皮膚27Plethora28~94多毛症(女性)48~81出血斑23~75赤紫色伸展性皮膚線条46~68ざ瘡21~52四肢所見近位筋の筋力低下39~68浮腫15~66その他著しい抑うつ12~40*文献4-11の1,056症例に基づく情報.各研究は50症例以上を対象としている.†診断基準:Cushing症候群:1日のコルチゾールまたはコルチコステロイドの代謝産物が増加し,日内変動が消失し,デキサメタゾン抑制試験で異常を示すもの.‡結果は頻度の中央値であるが,統計学的に不均一であれば値の範囲を示している.

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