2360産婦人科研修ノート 改訂第3版
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4001疾患概念・ 妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy : HDP)は妊娠時に高血圧が認められる疾患である.・ HDPは,妊娠高血圧(gestational hyper-tension),妊娠高血圧腎症(preeclamp-sia),加重型妊娠高血圧腎症(superim-posed preeclampsia),高血圧合併妊娠(chronic hypertension)に分類される.・ 「重症」と規定されるのは重症高血圧の存在,母体の臓器障害や子宮胎盤機能不全の症候が認められる場合である.(詳細は日本妊娠高血圧学会ウェブサイトを参照のこと1)).母児の予後は高血圧の重症度が高まるほど悪い.一方,蛋白尿の重症度は母児予後と直接には関わらない.・ 正常血圧で蛋白尿,浮腫,あるいはその両者を呈する病態はHDPと区別される.2診断a 高血圧…………………………………・ HDPと診断された症例の中には,まれに偶発合併症としての二次性高血圧が存在する.その中には分娩開始~産褥期以降の時期に原疾患が増悪するものがあるため,鑑別が重要.・ 診察室における1回の測定値で高血圧を診断してはいけない.測定値が高いときは,数回ゆっくりと深呼吸をさせた後に再測定する.そのようにして測定し,少なくとも数時間間隔で連続して高血圧を認めた場合に高血圧と診断する.・ 白衣高血圧の除外も重要.白衣高血圧は診察室での血圧が常に高血圧(140/90mmHg以上)で,非医療環境下で測定した血圧(家庭血圧や自由行動下血圧)は正常であるものをいう.妊婦健診で高血圧を示す妊婦には,家庭血圧測定(起床時と就寝前)を指示することが望ましい.評価は,直近5~7日間の測定値の平均で行う.妊婦の家庭血圧の評価基準はまだ定まっていないので内科領域での評価基準を準用し135/85mmHgを超えるものを高血圧とする3).・ 分娩開始時の血圧が正常であってもその後血圧上昇をきたすことがある.特に,高血圧家族歴陽性,妊娠中蛋白尿陽性,B 産科疾患の診断・治療・管理妊娠高血圧症候群14妊娠高血圧腎症の分娩後は創部の血腫形成や貧血進行の監視,子癇発症防止,肺水腫防止(適正量輸液)が重要.Pitfall! 「高血圧を呈する妊婦」=「妊娠高血圧症候群(HDP)」であるが,病態としては様々なものが含まれている.管理方針決定にはその違いの見極めが必要.まれではあるが偶発合併症としての二次性高血圧の有無も検討する 降圧療法は高血圧持続による母体臓器障害の防止が目的である.その際は,過度の血圧低下による胎盤循環不全を起こさないことが肝要.DOs妊婦があまりに高い血圧や多量の蛋白尿を呈するときは,偶発的内科疾患潜在の可能性を疑う.コツ

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