2361腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第8版
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5234 高齢CKD患者の治療の実際30高齢CKD患者への対応下する患者,そして,ほとんど腎機能が低下しない患者に分かれる. ■健常人のみに限定して調べるとGFRの低下速度には,年齢による違いはみられなかった.また,GFR 45 mL⊘分⊘1.73 m2までは腎機能が低下するほど,その低下速度は小さくなっていた. ■高齢者においても腎機能が急速に低下する場合は,加齢以外の原因を調べるべきである. フレイル等で筋肉量が低下した高齢の患者では,血清Cr値が低下するためGFRを誤って高く評価してしまうこともある.GFRを実測できない場合にはシスタチンCによる推算でGFRを確認することが推奨される(4章 慢性腎臓病の診断と管理〈p.103〉参照).可能であれば,Cr値から推定するよりもクレアチニンクリアランスなどで腎機能を実測することが望ましい. ■高齢者に多い腎疾患を示す(表1).高齢者のネフローゼ症候群で最も多いのは膜性腎症で54.8%を占める(表2).また,微小変化型ネフローゼ症候群は,必ずしも青壮年に多いものではなく,高齢者においてもネフローゼ症候群の約20%は微小変化型である. ■高齢者で予後が悪いために注意すべき疾患としては,ANCA関連腎炎,アミロイドーシスがある.2~3か月の間に急に腎機能が低下してきた患者やCRPが高い患者ではANCA関連腎炎の可能性を疑う.肺出血病変や下肢の紫斑の確認も重要である.アミロイドの沈着による腎障害であるアミロイドーシスは検尿試験紙で尿蛋白が軽度の場合もあるが,高齢者に見逃してはならない疾患である. ■高齢CKD患者の治療においては目標数値にこだわらず,患者の生命予後や個々の患者の状態にあわせて,個別に管理目標を設定することが必要である. ■高齢者は,起立性低血圧,食後血圧低下,早朝の昇圧高齢者で注意すべき疾患3高齢CKD患者の治療の実際4

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