2373女性の動脈硬化性疾患発症予防のための管理指針 2018年度版
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動脈硬化性疾患危険因子の特徴2脂質異常症,喫煙,糖尿病は,加齢とともに冠動脈疾患のリスク上昇と密接に関係する.高血圧,喫煙,糖尿病は脳梗塞の重要な危険因子である.妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,多囊胞卵巣症候群,子宮内膜症の既往は,いずれも将来の心血管系疾患発症の危険因子である.脂質異常症1 冠動脈疾患発症と総コレステロール(TC)や低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)との関連を前向きに検討したJapan Arteriosclerosis Longitudinal Study-Existing Cohorts Combine(JALS-ECC)やCirculatory Risk in Communities Study(CIRCS)によると,女性は,TC高値群では低値群に比べて多因子調整後の急性心筋梗塞発症リスクが有意に高いこと1),LDL-Cが30mg/dL増加ごとの多因子調整後の冠動脈疾患発症リスクは1.42と有意に高いことが示された2).また,死亡リスクについて,Evidence for Cardiovascular Prevention from Observational Cohorts in Japan(EPOCH-JAPAN)では40~69歳の女性においてTC高値群では低値群に比べて有意に冠動脈疾患死亡リスクが高く3),NIPPON DATA 80でも高TC血症群で冠動脈疾患死亡の多因子調整リスクが有意に高かった4).これらのことから,TCやLDL-Cは女性の冠動脈疾患発症の有意なリスク因子であり,死亡リスクを高める可能性も示唆される. トリグリセライド(TG)高値は虚血性心血管疾患発症の有意な危険因子であるが5,6),特に女性では非空腹時のTGが虚血性心血管疾患発症の有意な危険因子である6).また,TCからHDL-Cを引いたnon-HDL-Cについて,女性ではnon-HDL-C高値群は低値群に比べて多因子調整後の急性心筋梗塞発症リスクや冠動脈疾患発症リスクが有意に高いことが示された1,7).ただし,non-HDL-Cと冠動脈疾患死亡リスクとの関連は男性では有意であったが,女性では明らかではなかった8).喫煙2 Japan Public Health Center-based Prospective Study(JPHC)Cohort 1や吹田研究では,女性の喫煙者の心筋梗塞発症率は非喫煙者に比べて3~8倍高いことが示された9,10).また冠動脈疾患死亡リスクも喫煙女性では有意に高かった11).メタアナリシスでは,非喫煙者と比較すると,図1のように女性の喫煙者は男性の喫煙者よりも25%冠動脈疾患死亡リスクは高いことが示された12).Japanese Acute Coronary Syndrome Study(JACSS)によると,急性心筋梗塞は男性のオッズ比4.0に対し,女性では8.2と高いことが報告され,男性に比べ女性の喫煙は極めてハイリスクである13).また,吹田研究から女性の喫煙は脳梗塞発症の有意な危険因子になることが示された10).8

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