2379消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン2018
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016推 奨消化器外科領域手術におけるSSIの危険因子は,ASA-PS 3以上,創分類(汚染および感染創),手術時間延長,糖尿病,高度肥満,低栄養,喫煙,術中輸血などがあげられるB.CQ 1-3消化器外科領域手術におけるSSI発症のリスク因子は? 多くの因子が創傷治癒および術後感染症に影響を与える1).これらの因子は,宿主に関連した危険因子(内因性因子)と手技に関連した危険因子(外因性因子)に大別される.術後感染発生危険因子に関して多くの報告があるが,年齢,性別などの制御不能な因子もあれば,栄養状態,喫煙,適正抗菌薬使用,術中手技などの制御可能な因子がある. 手術部位感染(SSI)発生危険因子として広く知られているものとして,NNIS(National Nosocomial Infection Surveillance)リスクインデックス11)として用いられる米国麻酔学会(ASA)の術前状態分類(ASA-PS),手術時間,創分類がある.すべての術式を含めたSSI危険因子に関するシステマティックレビュー(SR)によれば,高BMI,NNISリスクインデックス(創汚染度,手術時間延長),糖尿病がSSI危険因子と報告されている2).さらに,イタリアのSSIサーベイランスでは,手術時間延長,ASA-PS 3以上,術前入院期間2日以上がSSI危険因子であるとされている3). わが国のサーベイランスデータを集計したSSI危険因子に関する報告10)によると,虫垂および小腸手術を除いたすべての術式において術中輸血がSSI危険因子として抽出されている(表1-2).また,糖尿病は胃手術および結腸手術でSSI危険因子,ステロイド使用は胆囊手術および結腸手術でSSI危険因子としてあげられている. 結腸手術における詳細な検討では,人工肛門造設,緊急手術,および他領域手術手技の合併手術がSSI危険因子と報告されている11).一方,直腸手術では人工肛門造設および緊急手術がSSI危険因子と報告されている11).さらに,胃手術では,胃全摘術,遠位側胃切除術,それら以外の胃手術に分けて検討した報告があり,各術式で与える影響は異なるものの,年齢および緊急手術がSSI危険因子であるとされている12).肝胆膵手術における院内感染対策サーベイランス(JANIS)データの検討13)では,膵頭十二指腸切除術,胆道再建を伴わない肝切除術,その他の肝胆膵手術ではSSI発生率が異なり,これらの手技を個々に分析する必要性を強調している.この報告によると,年齢,創分類および手術時間は各術式で危険因子であるが,ASA-PSは胆道再建を伴わない肝切除術以外でSSI危険因子とされている. 消化器外科領域手術におけるSSIの危険因子を検討した7報4-10)を用いてわれわれが行ったメタアナリシスでは(表1-3),SSIの危険因子として,ASA-PS 3以上,創分類(汚染およ解 説

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