2385小児救急治療ガイドライン 改訂第4版
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総論2AA総論小児救急医療の特徴北九州市立八幡病院小児救急・小児総合医療センター市川光太郎12小児疾患の変貌と社会観念の変化による小児救急医療への影響は?近年,小児疾患の病態が様変わりして,いわゆるbio-morbidityから,心身両面の障害を伴ったco-morbidities,あるいはnewmorbidityといわれる疾患病態へ変わってきた.このような背景を受けて,小児医療における小児科医の役割はさらに重要視されるとともに,そのニーズが高まっているといえる.少子化時代であるにもかかわらず,小児の救急受診は増加する一方であるが,この背景には,専門医志向として小児科専門医による診療の要望が強くなっていることがある.単に身体的治療のみに終始する医療では保護者は満足できない状況にあり,この点は特に救急医療においても強いであろう.高質な小児救急医療の提供を目指す限りは,このような病態変化を配慮しての対応が基本となる.すなわち,救急医療といえど,その場限りの診療ではなく,子どもの将来を見据え,養育背景の是非を含めた心身両面での長期的視野に立った治療が必要であり,医療提供側の意識改革が必要である.また,完結医療を望む声が強く,応急診療所(急患センター)での応急処置ですむ時代ではなくなった.保護者にとっては,急患センターであろうが医療機関はどこでも同じであり,どんな時間でもベストの診療が受けられるとの意識が強い.このような背景から,保護者の意識と医療者側の応急診療という意識とのギャップが年々広がっており,いかにこの点も認識して救急診療にかかわるかが求められているといえる.小児救急疾患の特徴とは?診療する側にとって小児救急疾患はある意味では,成人医療ですみ分けされてきた臓器対応別診療科のような対応は困難であり,横断的あるいは総合的な対応を必要とする疾患群と考えられる.Point小児救急疾患の特徴軽症疾患が多いがゆえに,診療側に慢心が生まれやすく,重篤な疾患を看過しやすい.主訴が不明瞭で非特異的であり,確定診断が初診時には困難なことが多い.病勢の進行が速く,緊急度・重症度の予知が困難であり,一気に悪化する症例もまれではない.小児は年齢幅以上に発達幅が広く,全身的かつ広範な対応が求められる.育児不安など保護者にかかわる社会医学的要素が極めて強く,診療や治療方針に影響が起こりやすい.いわゆるbio-morbidityな疾患から,co-morbidities,newmorbidityといわれるような心身の複合的疾患へその病態が変容し,psycho-socialemergencyが増加している.以上のような特徴があり,その対応にはある意味での専門性が必要な部分が多いと思われる.さらに心身ともの総合的対応や小児の健全育成を見据えての対応が必要であり,その場限りの対応では不十分な疾患が多いともいえる.

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