2385小児救急治療ガイドライン 改訂第4版
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おもな救急疾患164PointWest症候群は,最も有名な年齢依存性てんかんの代表の一つである.典型的には頭部,体幹,四肢が対症的に屈曲する数秒のスパズムが群発(シリーズ形成)し,精神運動発達遅滞,脳波上のヒプスアリスミアが特徴である.ACTH療法が奏効することもあるが,発作消失は一時的であることが多い.Dravet症候群は発熱や入浴によって誘発され,頻回に重積する極めて難治なてんかん症候群である.精神運動発達遅滞をきたすことが多く,一部では遺伝子診断も行われている.乳児良性部分てんかんは大半が生後6か月までに発症し,意識減損,眼球偏位,チアノーゼ,二次性全般化をきたす.重積をきたすことはなく群発はしやすいが,発作間欠期の意識は清明で発達に問題はない.カルバマゼピンの少量投与が有効である.c幼児期のけいれん(図2)熱性けいれんの好発する時期であり,てんかんの発症率が最も高い時期である.熱性けいれん以外では軽症下痢に伴うけいれんも頻度が高く,この年齢に発症する難治なてんかんにはLennox-Gastaut症候群,ミオクロニー失立発作てんかん,良性てんかんとしては,睡眠中の嘔吐で始まることが多いPanayiotopoulos症候群などがある.Point軽症下痢に伴うけいれんは,熱性けいれんに次いで多いけいれんである.無熱性で軽い胃腸炎症状を伴うが,低血糖や電解質異常は認めず,数分以内の全身強直間代性けいれんが群発するのが特徴である.発作間欠期の意識は清明で,各種検査は異常がない.通常は一度限りのカルバマゼピン(5~7mg/kg)の経口または胃管投与が有効で,後遺障害は残さない.Lennox-Gastaut症候群は脳波上の遅棘徐波を有し,発作は強直発作,脱力発作,ミオクローヌス,非定型欠神など多彩で,重度の精神発達遅滞を有する代表的な難治性てんかんの一つである.West症候群から引き続くことも多く,脳形成異常など先天的なもの,低酸素性脳症後遺障害などが原因であることがある.d小児期のけいれん(図2)この時期はあらゆる発作型を持つてんかんが発症し,幼少期に比較すると,けいれんを主訴に受診する小児におけるてんかんの頻度が高まってくる.頻度の高いてんかんは欠神てんかん,中心・側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん,午前中よく物を落とすことで気づかれやすい若年ミオ表3乳児期にてんかんと間違われやすい疾患胃食道逆流現象哺乳後に頭や背中を反らせる,無呼吸,一点凝視,四肢のピクツキなど.下気道症状を繰り返す乳児突発性危急事態(ALTE)無呼吸,チアノーゼ,緊張低下,呼吸促迫など薬物中毒,薬剤誘発性ジストニア意識障害,後弓反張,斜痙,両眼上転発作などQT延長症候群致死性失神,発作後の意識回復が早い.運動歴,家族歴が重要泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)激しく啼泣し,息をはき出した状態より移行する.チアノーゼ型と蒼白型がある.鉄欠乏と関連乳児自慰会陰部に圧がかかる姿勢,気をそらすと治まる常同症頭をぶつけたり体をゆらしたり舌を出す.自閉症スペクトラム,Rett症候群などチック突発的,不規則な体の一部の早い動きと発声を繰り返す,覚醒時のみ睡眠随伴症睡眠時徘徊,夜驚,錯乱など小児周期性症候群周期的なめまい,嘔吐,頭痛など

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