2390ポンぺ病診療ガイドライン2018
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2疾患概要 ポンペ病はライソゾーム酵素,酸性α-グルコシダーゼ(acid α-glucosidase;GAA)の遺伝子(GAA)変異により発症する常染色体劣性遺伝形式の先天代謝異常症である.GAAの基質であるグリコーゲンが骨格筋,肝,心筋などのライソゾームに蓄積し,筋力低下,肝腫大,心筋症などを発症する.病  態 GAAはライソゾーム内でグリコーゲンを分解する酵素であり,全身の組織のライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し,ライソゾームが拡張し空胞化する1).エネルギー産生障害に基づく病態は明らかではない.拡張したライソゾームが筋収縮に障害をもたらし,筋力低下が生じる.酸性環境である拡張したライソゾームが破裂し,ライソゾームの分解酵素が細胞質内に放出されることにより,骨格筋構造の破壊が進行すると考えられている.ライソゾームはタンパクやミトコンドリアなどの小器官を分解するためにライソゾームに運搬しリサイクルするオートファジー(autophagy)の機構の重要な役割を担っており,ポンペ病ではGAA欠損により生じる細胞内のオートファジーの破綻が骨格筋構造と機能の破壊に大きく関与していると考えられている2).病型・臨床症状 臨床症状の発現時期,主体となる臨床症状や臨床経過は残存酵素活性と関連する.発症時期から乳児型(古典型)と遅発型(小児型および成人型)に分類される3). 乳児型は完全酵素欠損症で,おもに心筋と骨格筋が罹患する.全身の著明な筋緊張低下,心肥大,肥大型心筋症,肝腫大を認め,自然経過においては,呼吸不全,心不全により多くの症例は1歳未満に死亡する4). 遅発型(小児型と成人型)は,残存酵素活性(正常の40 %未満)を有する.緩徐進行性の近位筋優位のミオパチーを呈し,通常心筋は侵されない.遅発型は発症時期により分類され,小児型は,乳児期から青年期までの発症で,乳児期発症のなかでも進行性の心筋症を認めないものを指し,一般的に6か月以後の発症であポンペ病の概要I

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