2398みんなで考える性分化疾患
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48❶当センターでの自立支援の取り組みの概略と移行支援シート 当センターでの移行支援の取組みは,2012年のセンター内組織「移行期医療を考える会」での,年長患者の実態把握と,移行に必要な支援の検討から始まった.その後,その会は,①成人病院との連携を模索し移行環境を整える,②本人が病態や治療を理解し自律的な行動がとれるようにする,というそれぞれの目的別に活動した.後者の活動の一部として,看護師と心理士からなる「ここからの会(“からだと一緒にこころも大人に”“ここから始める移行期支援”の意)」が発足し,支援方法の検討や事例検討,勉強会を開催した.そして,2016年には,ここからの会の活動として「移行支援シート」を作成した1)(図1). 移行支援シートとは,慢性疾患をもつ子ども自身が自分の身体を理解し主体的に対応できるように,子どもの発達段階に合わせた支援の指標としたものであり,日本小児看護学会の「慢性疾患患者における支援のあり方」についてのシートをもとに,当センター版として,成長発達に応じて移行支援プログラムを加味したシートである.横軸は,支援対象となる年齢で,0歳から始まり,成人期までである.縦軸には,支援される側の子どもと養育者,さらに,支援する側の医療者(医師,看護師,心理士や保健師など)の欄を設けた. 子どもに関しては,療養行動における到達目標,各年齢層の発達の特徴と課題,そして,病気/治療に関すること,病気の捉え方等について記載し,各年齢層での目標,めやすとなる状態,行動を示した.養育者に関しては,子どもとの向き合いかた,病気/治療に関すること,セルフケア行動の促進,就学/就職などの項目を設定している. このシートの作成にあたっては「養育者」の欄を重視し,たとえば,養育者が子どもの病気をどのように受け止め,病気とともに生きていく子どもといかに向き合っていくかの見通しやめやすを盛り込んだ.たとえば,子どもとの向き合い方の項目では,・子どもの疑問や問いかけを受け止め,発達段階に即して,必要な事柄を伝えていく.・子どもが触れてはならないと感じる領域をつくらない.・子どもの疑問や不安について,聞く姿勢を持ち,丁寧に答えることができる.・子どもと何でも話し合える関係をつくることができる.・病気に向き合う家族の姿勢が,子どもの病気への向き合い方となる(家族が受け入れらない病気を,子どもが受け入れることはできない).・病気以外の子どもの世界を広げる(好きなこと,嫌いなこと,友達関係,将来の夢など……)である.これらの基本姿勢は,どの年齢でも重視したいと考えている. 種々の医療者の欄では,各年齢層でどのような支援をするかを記載している.すべての年齢層に共通するものとして,医療者全員の子どもと家族への向き合い方を示した.それは,・子どもの疑問や問いかけを受け止め,発達段階に即して,必要な事柄を伝えていく.・子どもが触れてはならないと感じる領域をつくらない.・子どもを主体とした言葉のやりとりを重視する 等である.このように,われわれ,支援する医療者も,子どもの人生にどのように向きあっているのかを絶えず自分自身に問うことが重要である. この移行支援シートは,個々の発達レベルを考慮し,現状を把握したうえで,次のステップへの目標を第5章:DSDの教育と自立支援―移行期医療,移行期外来の役割大阪母子医療センターにおける移行支援―自立支援2

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