2400子どもの予防接種
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56スライド 第Ⅱ部 各論3 B型肝炎疫 学■世界で推定2億5,700万人がB型肝炎ウイルスに感染し,88万7,000人がB型肝炎関連の急性および慢性肝疾患で死亡している■B型肝炎感染の頻度は世界の地域によって異なる ・高頻度地域(8%以上の人口がHBs抗原陽性):世界人口の45%が居住  中国,東南アジア,アフリカの大部分,太平洋諸島の大部分,中東の一部,アマゾン盆地 ・中等度地域(2~7%の人口がHBs抗原陽性):世界人口の43%が居住 ・低頻度地域(2%未満の人口がHBs抗原陽性):世界人口の12%が居住  アメリカ,西ヨーロッパ,オーストラリア■わが国のHBV有病率は,世界的にみれば低頻度地域に該当し,その推移は低下しているが,依然としてHBV感染者が新規に認められているz•B型肝炎病 態■HBVは,急性または慢性の感染者からの体液を介して非経口または粘膜曝露によって伝染する■小児のおもな感染経路は,HBVを有する母体からの子宮内感染や出生時の血液曝露,家族内感染者からの血液や唾液を介しての濃厚な接触である■成人では20~30%の感染者に急性肝炎が生じ,慢性肝炎の危険性は約5%とされる■乳幼児期のHBV感染は,容易にキャリア化し,母親から感染した乳児の90%が,1~5歳の間に感染した小児の30~50%が持続感染するz•B型肝炎臨床症状■HBVの潜伏期間は45~160日(平均90日)である■急性肝炎に特徴的な黄疸は通常1~3週間続き,皮膚や眼球結膜の黄染,褐色尿,灰白色便,肝腫大を特徴とする■初発症状出現から8週以内に,急性肝不全(劇症肝炎)に移行することもある■慢性肝炎の患者は無症状か,あるいは倦怠感,食欲不振,腹痛などの非特異的な症状を示す■肝硬変では脾腫,静脈瘤,黄疸,痒感,腹水,手掌紅斑,肝性脳症の症状を呈するz•B型肝炎合併症■B型急性肝炎に関連して,発熱,関節痛,関節炎,多彩な皮膚病変,血管神経性浮腫,蛋白尿を呈する血清病様症候群(serumsickness-likesyndrome),結節性多発動脈炎,再生不良性貧血がある■B型慢性肝炎に関連して,HBs抗原を含む免疫複合体の糸球体沈着が観察される膜性腎症があるz•B型肝炎診断のための検査■病歴や臨床症状から疑ったHBV感染症は,血清学的検査にて確定診断する■HBs抗原が陽性でHBV-DNAの上昇とIgM-HBc抗体高力価陽性(C. O.I≧10.0)であれば,B型急性肝炎と診断する■HBe抗原が陽性の場合は,HBVが活発に増殖している状態で感染力が強い状態を示す■HBs抗原が陰性となってもHBc抗体が陽性であることは,免疫抑制薬や抗腫瘍薬などの使用により再活性化をきたして肝炎を発症しうる(de novo肝炎)■中和抗体であるHBs抗体の存在は,HBV感染が治癒している,あるいはB型肝炎ワクチンによる免疫力の獲得や抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)の投与による受動免疫を得ている状態を示すz•B型肝炎ワクチン接種の禁忌■HBワクチンには酵母由来蛋白質が残存している可能性があり,酵母アレルギーのある者には注意を要する■ビームゲン®は添加物としてチメロサールを含有しているため過敏症に注意を要するz•B型肝炎ワクチン接種後の副反応■10%前後に倦怠感,頭痛,局所の腫脹,発赤,疼痛などがみられ,多発性硬化症,急性散在性脳脊髄炎,神経障害,Guillain-Barré症候群などが有害事象として報告されているz•B型肝炎治 療■B型急性肝炎に対する特異的治療介入の必要はない■日本小児科学会および日本小児栄養消化器肝臓学会の総説に準拠して,B型慢性肝炎が長期間(目安は2年以上)持続し,ALTとHBV-DNA量あるいは肝病理所見が新犬山分類でA2あるいはF2以上の例に治療が考慮される■現時点での小児B型慢性肝炎の治療は,インターフェロンあるいはペグインターフェロン(Peg-IFN-α-2a)単独療法が基本となる■インターフェロン無効例や肝硬変症例に核酸アナログによる治療を検討するz•B型肝炎B型肝炎ワクチン■急性B型肝炎の予防と慢性HBV感染およびHBV関連慢性肝疾患罹患率を減少させるために,B型肝炎ワクチン(HBワクチン)は有効である■2016年10月からすべての乳児を対象に定期接種が開始された■ビームゲン®は遺伝子型C抗原の,ヘプタバックス®-Ⅱは遺伝子型A抗原のワクチンである■わが国で多かった遺伝子型B,Cに加えて,近年増加し始めた遺伝子型Aを含めたどの遺伝子型のHBVに対しても,2つのワクチンは感染防御が期待でき,交互に接種したとしても同等のHBs抗体の獲得が得られるz•B型肝炎ワクチンスケジュール■定期接種として,0.25mLを生後1歳に至るまでの乳児に対して,生後2か月~9か月までの間に,4週間の間隔をおいて2回,さらに1回目の接種から5か月以上の間隔をおいて1回,計3回皮下注射する■母子感染防止事業として健康保険適用下で,HBs抗原陽性の母より出生した乳児に対して,以下の予防処置を行う ①出生直後(12時間以内が望ましいが,もし遅くなった場合も生後できる限り早期に)  HBグロブリン1mL(200単位)を2か所に分けて筋肉注射(大腿外側)  HBワクチン0.25mLを皮下注射 ②生後1か月 HBワクチン0.25mL皮下注射 ③生後6か月 HBワクチン0.25mL皮下注射z•B型肝炎

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