2409高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 ダイジェスト・ポケット版
4/8

臨床的特徴 高尿酸血症は,それ自体による自覚症状は認めず,健康診断等で偶然指摘されることも多い.高尿酸血症の原因として,尿酸産生亢進をきたす核酸代謝関連酵素の遺伝子変異(HGPRT欠損やPRPP合成酵素亢進症)と尿酸トランスポーター(輸送体)の機能低下型遺伝子変異などの単一遺伝子異常と多遺伝子異常などが示唆されている.また,食事,飲酒,運動などの生活習慣を含む多様な環境要因も高尿酸血症の発症に強く関与する.高尿酸血症の定義は尿酸の溶解度から決められており,男女問わず血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態と定義される.高尿酸血症は,尿酸産生過剰型,尿酸排泄低下型,混合型に大別されていたが,本ガイドラインでは腎外排泄低下型(腎負荷型)の存在を明記している. 高尿酸血症が続くと体内の尿酸プールが増加し,関節や腎尿路系にMSUが結晶として析出する.関節に析出したMSU結晶を白血球が貪食し炎症を惹起するサイトカインが分泌されると関節炎が起こるが,これが痛風関節炎である.MSU結晶により尿路結石ならびに慢性間質性腎炎による腎不全などの高尿酸血症および高尿酸尿症による重篤な合併症も起こりうる.高尿酸血症には高血圧やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病や脳・心血管イベントなどの臓器障害の合併が高頻度に認められる.無症候性高尿酸血症を生活習慣病や臓器障害のマーカーとして取り扱うかリスクとして取り扱うかは意見の分かれるところである.尿酸降下薬には尿酸生成抑制薬であるキサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害薬と尿酸排泄促進薬があり,原則的には腎負荷型(尿酸産生過剰型や腎外排泄低下型)には尿酸生成抑制薬を使用し,尿酸排泄低下型には尿酸排泄促進薬を使用することが推奨されていた.疫学的特徴 食生活の欧米化に伴ってわが国の高尿酸血症患者数は年々増加し,2010年頃には成人男性の20〜25%に高尿酸血症が認められた.また,高尿酸血症の頻度は全人口の男性で20%,女性で5%と報告されている.高尿酸血症により引き起こされる痛風の有病率は,30歳以上の男性では1%を超えていると推定され,同一地域における各種調査を含む報告から,現在も増加傾向であると考えられる(図1).高尿酸血症患者のおよそ80%には高血圧,肥満,耐糖能異常や脂質異常症といった生活習慣病が合併し,1人の高尿酸血症患者に複数の生活習慣病が重複することが多い.その背景には内臓脂肪蓄積やインスリン抵抗性が関与することが示唆されている.このため高尿酸血症は動脈硬化,脳卒中,虚血性心臓病,心不全などの臓器障害とも密接な関連をもつ.12高尿酸血症・痛風の基本的特徴はじめに16

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る