2421子どもの摂食嚥下サポートガイド
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158トータルケアからみる摂食嚥下障害の支援 食べることは,栄養や健康や安全(誤嚥)の問題のみでなく,コミュニケーションや社会性の獲得という重要な役割があります.そして食べる機能の発達には,食行動(楽しみ),コミュニケーション(親子関係),認知能力(経験),栄養(成長)など,さまざまな意味合いがあります.そこには情緒や心理的な面も含まれます.発育期にあたる子どもにおいては,摂食行動が確立していくとともに,その子ども全体の発達が促されます.しかし,摂食嚥下障害に対するアプローチの多くは摂食嚥下機能からみた技術的な対応法であり,身体的および心理的な面も考えたトータルケアは重視されていません.チームアプローチとは異なり,その子ども全体を関係者の各々が考えることがトータルケアです. トータルケアにおいては,どのようなアプローチをする場合でも,あらかじめ子どもとの信頼関係を築く必要があり,食事を摂ることで,さらに信頼関係を築くようにします.どのような職種からのアプローチであっても,子どもの行動・心理を考えたアプローチを忘れてはなりません.そして,ただ介入すればよいということではありません.不適切な介入は自立を阻害します.摂食嚥下障害の支援と食行動 食事の基本は,食べさせてもらう技術が向上することではなく,自分で食べることです. 摂食嚥下障害がある子どもは基礎疾患や重症度が異なり,その対応はさまざまです.障害の有無にかかわらず,食べることへの対応においては子どもの食行動の発達を意識することが重要です. 摂食嚥下障害がある子どもに対して食事の介助やリハビリテーションを行われますが,摂食嚥下障害とそのリハビリテーションという面ばかりに目を向けると,食行動全体を考えることが忘れられてしまいます.上肢に不自由があり,自分で食べることができない場合もありますが,基本は子どもの能力を引き出すことで食べるのを支援することです.自分で食べたいという意欲は,自ら手や体を動かそうとすることにつながります.摂食嚥下障害がある子どもは上肢機能や体幹機能の問題を伴うことが多く,食べさせてもらう場面が増えます.これは栄養摂37ポイントトータルケアの 基本的な考え方のまとめ 子ども全体を把握したうえで,摂食嚥下障害に対応することが大切である. 楽しく食べることによって,自分で食べる意欲を育てる. 子どもの摂食嚥下機能を理解し,能力を引き出すことである. それぞれの関係者が子ども全体を考えるトータルケアとして対応する.Essence

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