2473小児保健ガイドブック
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■■障害とは1.障害の定義 障害の概念は,時代とともに大きく変遷している.2011年に改正された障害者基本法においては,「障害者とは,身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるものであって,障害及び社会的障壁(事物,制度,慣行,観念など)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう」と定義されている.1993年版の障害者基本法に比べて,発達障害や社会的なバリアによって制限を受ける者が含まれるようになった.これは,1980年に国連で採択された「国際障害者行動計画」において,医学レベルでの「機能障害」,生活レベルでの「能力障害」,社会レベルでの「社会的不利」の3つの概念で障害を規定したことに影響されている.「国際障害者行動計画」で述べられている身体,知的,精神的障害とは単に医学モデルとしての機能障害を示しているものではない.機能障害があることによって日常生活にも困難が生じる.さらに,社会的にも偏見,差別を被るなど周囲の環境からも影響を受けることを構造的にとらえて分類している.2014年に日本は「障害者権利条約」に批准した.批准に先立ち,2013年には「障害者差別解消法」が成立し,2016年から施行されるようになった.「障害者差別解消法」の中では,社会的障壁の範囲について,「障害がある者にとって日常生活又は社会的生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念等その他一切のものをいう」としている.2.日本における障害児者数 小児医療の進歩に伴い,以前では致命的と考えられていた先天的な疾患や重い障害のある子どもたちも救命が可能となった.一方で,自閉スペクトラム症や注意欠如多動症のように以前にはあまり気付かれなかった障害も急増している.「令和2年度障害者白書」1)によれば,障害者数(障害児を含む)の概数は,身体障害者436万人,知的障害者109万4千人,精神障害者数419万3千人とされている.複数の障害を併せもつ者もいるため,単純な合計にはならないが,国民の7.6%が何らかの障害を有していることとなる.様々な障害や慢性疾患と闘いながら思春期・成人期に移行する子どもたちの数についても,多くの先進国と同様にわが国においても増加している.3.特別な医療ケアを必要とする子ども アメリカでは,慢性的な健康問題を有し,特別な医療ケアを必要とする子どもを青年期も含めて「特別な医療ケアを必要とする子ども」(Children and Youth with special health care needs:CSHCN)として取り扱うようになってきている2).知的障害や自閉スペクトラム症,脳性麻痺,聴覚障害などだけではなく,てんかん,心疾患,喘息,糖尿病などの慢性的に身体・発達・行動・精神状態に問題を有し,何らかの医療や支援を必要とする子ども・青年たちが含まれる.このような子どもたちの多くは,保健・医療・教育・就労など多くの専門家からの支援を必要としている.36関連する制度・法律4,5,6,7,8,9Essential point■身体,知的,精神的な障害をもっていたり,慢性的な疾患を有していたりするために,何らかの医療や支援を長期間にわたり必要とする子どもたちの数は増えている.■障害を抱える子どもたちへの治療には,本人と家族を中心に多くの専門家が連携する必要がある.■大人とは異なり,子どもには障害へのアプローチとともに発達の評価と発達状況に応じた対応が大切である.5障害を抱える子どもたち神戸市総合療育センター 高田 哲各 論A子どもを取り巻く環境

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