2473小児保健ガイドブック
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■■小児慢性特定疾病と指定難病1.小児の慢性特定疾病 悪性新生物,慢性腎疾患,呼吸器疾患(喘息)などの慢性的な疾患をもつ子どもでは,長期にわたる治療および療育が不可欠である.治療には多額の費用が必要で,保護者にとっては重い負担となる.1974年に先天代謝異常の医療給付事業などの既存事業を統合して,「小児慢性特定疾患治療研究事業」が開始された3).本事業は,慢性疾患を抱える子どもとその家族への支援を目的としており,当初は悪性新生物,慢性腎疾患,呼吸器疾患(喘息),慢性心疾患,内分泌疾患,糖尿病,膠原病,先天代謝異常,血液疾患の9つの疾患群を対象としていた.その後1990年には神経・筋疾患,2005年には慢性消化器疾患が加わり,11疾患群となった.2013年の児童福祉法改正に伴って法的な裏付けがなされ,財政的にもより安定した制度として機能するようになった.対象とする慢性特定疾病の条件として,①慢性に経過する疾患である,②生命を長期に脅かす疾患である,③症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾患である,④長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾患である,の4点があげられている.対象疾患の見直しが継続的になされており,現在では,16疾患群762疾病にまで広がっている.支援の在り方としては,①公平で安定的な医療費助成の仕組みの構築,②研究の質と医療の質の向上,③慢性疾患の特性を踏まえた健全育成・社会制度の促進,地域関係者が一体となった自立支援,と定められている.2.指定難病 2014年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が成立し,2015年1月1日より施行された.この法律により,財政的にも安定的な医療費助成の制度が確立した.助成の対象となる疾患は指定難病とよばれている.難病には,①発病の機構が明らかでなく,②治療方法が確立していない,③希少な疾患であって,④長期の療養を必要とする,という4条件を必要とする.指定難病には,さらに,⑤患者数がわが国において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しない,⑥客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立している,という2条件が加わっている.小児慢性特定疾病は根拠法が児童福祉法であるため,18歳未満が対象年齢となっている(継続が必要な場合は20歳まで延長可能).一方,指定難病には年齢制限がない.現在では,小児期発症の疾病も指定難病として多数認められるようになっている.■■障害の程度 ICF(International Classification of Functioning, dis-ability and Health)分類は,人間の生活機能と障害の分類法として,2001年,世界保健機関(WHO)総会において採択された.「国際生活機能分類」と訳され,医療だけではなく,介護,福祉,教育などの分野で広く用いられている.ICFの前身であるICIDH(国際障害分類,1980年)が「疾病の結果に関する分類」であったのに対し,ICFは「健康の構成要素に関する分類」であり,「参加の制約」に焦点を当て,診断名ではなく生活の中での困難さに注目している点が特徴である.この分類では,環境因子や背景因子の視点を取り入れるとともに,構成要素間の相互作用を重視している(図1)4).個人の生活機能は,健康状態と背景因子(環境因子と個人因子)との間の相互作用,あるいは複合的な関係とみなされる.各要素の間には相互関係が存在するため,一つの要素に介入すると他の複数の要素を変化させる可能性がある.■■治療と支援1.「療育」と「介入」 障害児の治療は,しばしば「療育」や「介入」とよばれる.「療育」という言葉は,医療と教育の組み合わせを意味している.一方,「介入」という言葉は,「療育」に比べて,社会制度などを含んだより幅広く包括的な意味合いとして用いられる.通常は,表15)のような順序で介入が行われる.障害児の治療には,本人と家族を中心に多くの職種の専門家が連携する必要がある.大人と異なり,子どもでは,障害へのアプローチとともに発達の評価と発達状況に応じた対応が重要で,保育士や教師も重要なチームメンバーとなる.多職種が連携し,各々の専門職がもつ異なった視点を共有することが重要である.子どもの生活環境にも配慮しつつ,発達にとって最もよい方法を見出すように努めなくてはならない.また,療育においては,家族中心的アプローチが重要である.家族の文化や歴史,価値観を大切にして,子ども37A 子どもを取り巻く環境 5 障害を抱える子どもたち各 論

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