2474脳血管内治療の進歩-ブラッシュアップセミナー2020
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46はじめに1 中大脳動脈瘤は脳動脈瘤全体の20%であり,開頭術の治療成績はよい.その理由は解剖学的に脳表から比較的に浅層であり,シルビウス裂という間隙に位置する.そのため顕微鏡下の操作は容易であり,視野の確保も良好である.中大脳動脈瘤は,適切な剥離操作により分枝血管と脳動脈瘤が全周性で視覚的確認が可能となることが多い(図1). 中大脳動脈瘤は,頚部が広く,不整形が多いため塞栓術は不向きとされていた.近年,adjunctive techniqueやVRD,さらにはPFDにより治療成績が蓄積され,その適応は拡大しつつある.しかし,再治療や塞栓性合併症などの報告も散見され,治療成績のよい開頭術と比較すると議論の余地がある1-3).本稿では,当施設における中大脳動脈瘤の塞栓術の代表例を提示し,治療成績から適応と限界について述べる.症例提示2■症例1(simple technique) 78歳女性.右破裂中大脳動脈瘤.多囊胞腎,慢性腎不全の合併による維持透析中,さらに高度の貧血を合併しており塞栓術を選択した.脳動脈瘤は,M1からやや軸がずれており,M2(posterior trunk)に騎乗していた(図2a).M2を保護するフレーミングが形成されれば,塞栓術は可能と判断した.安定したフレーミングが必要であり,いわゆる外向きのコイル選択をした.1stコイル充填時のマイクロカテーテル先端を示す(図2b).外向きのコイルは,分岐部およびM2に逸脱した(図2c).そのため,マイクロカテーテル先端を引き戻し(図2d),フレーミングを形成した(図2e).最終ループの直前でマイクロカテーテルを瘤内へ押し入れた(図2f).術後,完全閉塞が得られ,再増大は認めていない(図2g,h).中大脳動脈瘤塞栓術における適応と限界I 分岐部脳動脈瘤のすべて9西湘病院脳神経外科 竹内昌孝◉◉Adjunctive techniqueやデバイスの進化に伴い,塞栓術が可能な中大脳動脈瘤も存在する.しかし,再治療率も高率であり,適応の検討と術後の十分な経過観察が必須である.◉◉現時点において塞栓術の適応は,高齢者,既存の合併症や全身麻酔困難で開頭術のハイリスクなケースを選択している.患者の強い希望で塞栓術を選択する際には,十分なインフォームド・コンセントを要する.ssential PointE

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