2474脳血管内治療の進歩-ブラッシュアップセミナー2020
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88はじめに1 分岐部脳動脈瘤は,その解剖学的特徴からコイル塞栓術に難渋することが多いと考えられている.コイル塞栓術併用頭蓋内ステントがわが国で使用可能となった2010年3月以降の当施設での全コイル塞栓術1,202動脈瘤のうち,19.1%にあたる229動脈瘤(11.9%)が分岐部動脈瘤(脳底動脈,内頚動脈先端部,前交通動脈,中大脳動脈)であり,頭蓋内ステントの併用率は62.4%(143/229)であった.しかし従来の頭蓋内ステントでは,複数のステントを使用しない限り完全なネックカバーは不可能であり,一方で複数のステントを使用すれば血栓塞栓性合併症のリスクを危惧しなければならない.実際,分岐部動脈瘤に対するコイル塞栓術は現在もまだ治療難易度の高い動脈瘤と考えられており,当施設での治療成績も出血性合併症が6例(4.2%),永続的虚血性合併症が5例(3.5%)であり,必ずしも良好なものではない.また再治療が8例(5.6%),治療後の動脈瘤破裂が2例(1.4%)と治療の根治性にも課題が残されている. 当施設では2015年から2016年にかけて,IRB承認下にPulseRider(J&J/セレノバス)使用例を8例経験している.その初期経験について紹介する.PulseRider2 PulseRiderは,図1に示すようなナイチノール製の自己拡張型デバイスであり,分岐部動脈瘤に対するコイル塞栓術時に複数本のワイヤーでネックをカバーし,コイルの母血管への逸脱を予防する形状となっている.インプラントはステンレス製のデリバリーワイヤーに接続されており,専用コントローラーでGDCと同様の機構で電気離脱する. ネックをカバーするアーチの部分の形状には,T字型,Y字型の2種類が存在し,母血管との分岐角度が90°までであればT字型,120°までであればY字型を選択する(図2,3).PulseRiderの使用経験I 分岐部脳動脈瘤のすべて17神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科 今村博敏,坂井信幸◉◉分岐部ワイドネック型動脈瘤用デバイスとしてPulseRiderが2020年に使用可能となった.◉◉数本のワイヤーで形成され,リーフレット状に形状記憶されたアーチにより,母血管へのコイルの逸脱を予防するデバイスである.◉◉リーフレットの形状にT字型,Y字型,アーチ幅に8.6mm,10.6mm,レッグ幅に2.7~3.5mm,3.5~4.5mmのサイズがあり,専用コントローラーで電気離脱する.ssential PointE

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