2475言語聴覚士ドリルプラス 高次脳機能障害
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読み解くためのKeyword67解答第3章 高次脳機能障害の臨床1 ①動作,②困難さ,③道具,④単一,⑤エラーレス,⑥細分,⑦言語2 ⑧呼称,⑨色,⑩顔,⑪声,⑫手がかり3 ⑬視覚,⑭プリズム,⑮日常生活動作(ADL)4 ⑯言語化失行のリハビリテーション 従来,失行は日常生活には関与しないと考えられてきた。しかし,近年は日常生活の実場面において障害を引き起こすことが知られている1)。障害された動作そのものを訓練する方法と,日常生活における困難さを回避する代償を習得する方法がある。一般に,訓練では次の工夫を行う。①本人が使う道具を用いる,②単一物品から始める,③手を添えて操作の仕方を誘導し,エラーレスで行う,④実際の場面で行う,⑤系列動作を少なくし,また,細分化する。代償法では,行為を言語化する代償を習得する,手順を図や写真で示す。例えば,着衣失行のリハビリテーションでは,衣類のボタンの数を減らす,あるいはマジックテープに換えるなどがある。失認のリハビリテーション 視覚性失認における直接的訓練としては,基本図形のポインティングや絵カードや物品の呼称などを課題の難易度を段階的に上げながら反復訓練を行う。また,質感や色などのさまざまな情報を手がかりとし,短絡的な判断をせず,触覚などの保たれている感覚も用いて認知する代償法の獲得を試みる。さらには,部屋を適度な明るさにする,日常使うものは決められた場所に片付けるなどの環境調整を行う。相貌失認では,顔の構成要素の特徴から人物を同定する訓練や,声や髪型,仕草などの周辺情報を,人物同定の手がかりとして積極的に活用する訓練などがある。視空間障害のリハビリテーション 半側空間無視に対しては,机上訓練として視覚走査訓練,プリズム適応療法などがある。視覚走査訓練では,左を見るよう声をかける,左端に目印をつけるなどしながら反復訓練を行う。プリズム適応療法はRロセッティossettiらにより半側空間無視への応用が試みられた方法である2)。視野を右にずらすプリズム眼鏡を着用し,前方の目標点に向かってリーチ動作を行うことで,視覚性には右側にずれて見える状態に到達運動を順応させるというものである。半側空間無視の改善は眼鏡をはずしたあとにみられる。机上訓練に加え,日常生活場面で重要度の高い日常生活動作(activities of daily living:ADL)の反復訓練も行う必要がある。また,車いすの左側のブレーキを長くするなど環境調整なども行われる。 道順障害では,地図は有効ではない。そのため,道順を言語化したメモを用いる代償法の獲得が有効である。

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